1面読み比べ
野田総務大臣の事務所に関する情報公開請求をめぐる問題について、金融庁が職員の処分を検討していると、朝日新聞と産経新聞が 1面で報じています。それ以外は、各紙異なるニュースで1面を構成しています。
毎日新聞は、ヤマトホールディングス子会社による法人向け引越し代金の課題請求問題について、「2010年ごろから見積もり料金の水増しが組織的に行われていた」という証言を報じています。
読売新聞は、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の導入費用について、防衛省が「2基で4000億円以上と、当初見通しの倍の算定をしていることが分かった」と伝えています。
朝日新聞 1面記事一覧
賃貸住宅融資、支援機構が厳格化 サブリース巡り懸念
金融庁職員の処分検討 情報公開請求、漏出で 官房長官
火星に「湖」 氷の下「生命残れる環境」 イタリアの研究チーム分析
12万冊、悲劇 岡山・倉敷 西日本豪雨
毎日新聞 1面記事一覧
最愛の人 西日本豪雨/上 岡山・真備、80代夫婦 抱えあい、力尽きた テーブルに立ち「水が来とるけ」
ヤマトHD 「組織的水増し」 元支店長「会社は黙認」
欧州司法裁 ゲノム編集は「組み換え」 規制対象と初判断
日経新聞 1面記事一覧
研究開発費、企業の4割「最高」 車関連けん引
今年度本社調査 12.4兆円、9年連続で増加
世界景気 持続成長を問う(2) 中国、高成長に内憂外患 再び減速基調
石炭火力の新設規制 経産省方針、小型は事実上禁止
男性の育休、必ず1カ月 積水ハウス 分割取得OK
読売新聞 1面記事一覧
陸上イージス 4000億円超…最新レーダーなど 2基、当初の倍
[政治の現場]号砲 自民総裁選<1>出馬なら「処遇できないよ」
相模原殺傷2年 「やまゆり園」解体進む
続く酷暑 西日本38度 熱中症死9人…台風12号 週末上陸か
産経新聞 1面記事一覧
米EU 貿易対立解消探る 首脳会談トランプ氏を説得へ
東京が映す未来 下 再生エネ五輪運営の原動力
野田総務省の情報公開問題 金融庁、職員処分を検討
サイバー被害5分類 政府 生活への「深刻度」導入
ピックアップニュース
「イージス・アショア」導入費用が高騰?
「イージス・アショア」とは、イージス艦に搭載されているミサイル迎撃システムを陸上に配備したもので、防衛省は秋田県と山口県に1基ずつ配備する方針です。導入費用について防衛省はこれまで、1基あたり1000億円、2基で2000億円という金額を目安として説明してきました。この費用が高騰するという見通しを各紙が報じていますが、その金額はバラバラです。
主要5紙の中ではまず、毎日新聞が22日の朝刊に掲載した記事の中で
2基の導入費用が従来の見積額より2~3割増え、2500億円前後に上る見通しとなった。政府関係者が明らかにした。イージス艦のレーダーの倍以上の探知・追尾能力を持つ米国製新型レーダーの採用を決めたことで、上方修正した
と報じました。
その翌日、産経新聞は朝刊1面トップ記事で、防衛省が2基で総額6000億円以上になると試算していることがわかった、と報じました。費用高騰の理由については
米国から購入するミサイル発射システムや最新鋭レーダー、デッキハウス(建物)などの主要装置に加え、イージス・アショア自体の防護対策や弾薬庫など関連施設も必要となるため、当初の想定以上に費用が膨れあがった
と解説しました。
これに対し、読売新聞はきょうの朝刊1面トップ記事「陸上イージス 4000億円超…最新レーダーなど 2基、当初の倍」で、
防衛省が地上配備型迎撃システム「イージスアショア」の導入費用について、2基で4000億円以上と、当初見通しの倍の算定をしていることが分かった
と報じています。価格高騰の原因は最新鋭のレーダーだとして、
イージス艦のレーダーより高額で、2基の本体価格が約2500億円になる。防護対策や施設整備など関連経費も膨れ上がり、計4000億円以上となった
と説明しています。
朝日新聞はきょうの記事「陸上イージス計画、調査入札を先送り 導入費も膨らむ見通し」の中で、
イージス・アショアは本体のほかに、採用が見込まれる米ロッキード・マーチン社製の新型レーダーなど関連装備費もかかるため、防衛省内には、2基で総額5千億円超に跳ね上がるとの指摘もある
と伝えています。
このように、防衛省が「2基で2000億円」を目安と説明してきた「イージス・アショア」導入費用について、「2500億円前後(毎日)」「4000億円超(読売)」「5000億円超(朝日)」「6000億円以上(産経)」と様々な金額が報じられています。
政府関係者へのオフレコ取材に基づいて各紙が記事を掲載している状況ですが、報じられている金額にあまりにも幅があるため、注意が必要です。8月末の概算要求にむけて、いずれ正式な金額が出てくる見通しです。
今日の社説
朝日新聞
毎日新聞
日経新聞
読売新聞
産経新聞
社説読み比べ(自民党総裁選挙)
ことし9月に行われる自民党総裁選挙について、毎日新聞がきのう、朝日新聞・読売新聞・産経新聞の3紙がきょう社説で取り上げています。
4紙とも、総裁選を通じた活発な議論が重要だという問題意識は共通しています。岸田氏が出馬しないことについては、読売を除く3紙(毎日・朝日・産経)が批判しています。この点、毎日と朝日は特に「安倍首相1強」とからめて問題視しています。
毎日新聞
毎日新聞はきのうの社説「岸田氏が総裁選不出馬 自民党の閉塞感が表れた」の中で、岸田氏が出馬しないことについて
候補の一人がこうして早々と戦線離脱すること自体、「安倍1強」状況の下で自民党に広がる閉塞感を表していないか
と指摘。岸田氏の不出馬の判断について、
安倍首相と戦えば、総裁選後の党人事や内閣改造で自ら率いる派閥に不利になるかもしれないとの計算が働いたと思われる
とした上で、
「安倍首相3選」の結論ありきで、多様な議論が展開されないとすれば、これもまた民主主義の危機と言うべきである
と訴えています。
朝日新聞
朝日新聞はきょうの社説「自民党総裁選 1強になびく危うさ」の中で、
5年7カ月に及ぶ長期政権の下、我も我もと「安倍1強」に付き従う姿は、闊達な論争が失われた党の姿を映し出す
と指摘。岸田氏の不出馬の判断について
背景には人事での処遇をちらつかせる党内の権力闘争があるのだろう。安倍氏を支える麻生副総理兼財務相は先月、「(総裁選で)負けた時には冷遇される覚悟をもたねばならない」と揺さぶりをかけた。こんな発言がまかり通ること自体、1強のおごりを示しているというほかない
森友・加計問題で、行政の公正性と政治への信頼を損なった忖度の構造が、官僚だけでなく、選挙で選ばれた国民の代表たる国会議員の間にも根を広げているのは憂うべきことだ
などと、「1強のおごり」や「忖度の構造」を批判しています。
強引な国会運営にしろ、政権をめぐる疑惑の放置にしろ、1強政治の弊害が誰の目にも明らかな今、総裁選で示される自民党の選択は極めて重い
1強の裏に広がるのは、活力なき政治だ。一人の権力者になびくだけの現状は危うい
と訴えています。
読売新聞
読売新聞はきょうの社説「自民党総裁選 骨太の政策論争に期待する」の中で、岸田氏の不出馬の判断について、
不出馬は将来の総裁選を見据えた大局的判断と言える
岸田氏は、立候補しても展望は開けないとみたのだろう。要職をこなして研さんを積み、今後に備えるべきだ。岸田派の結束維持も課題である
などと指摘。出馬しない判断は問題視していません。安倍首相が再選される可能性が高い中、出馬に意欲を示す石破氏に対して、
首相とは異なる政策を掲げて論戦を挑んでもらいたい
とし出馬を期待しています。その上で、
3年前の総裁選で、首相は無投票再選を果たした。6年ぶりとなる選挙戦を自民党は党の活性化につなげるべきだ。総裁候補は、日本が直面する重要課題への具体的な処方箋を明らかにする必要がある
と指摘しています。
産経新聞
産経新聞はきょうの社説「自民党総裁選 活性化に論争欠かせない」の中で、
政権与党の中で本格的な政策論争を行い、日本の針路について語り合う。それが総裁選の意義である。その機会を失えば、党の活力は削がれ、政策の修正や強化を図る上で支障を来しかねない
と総裁選の意義を強調し、石破氏を含め名前が挙がる議員に対して「ぎりぎりまで出馬を模索してもらいたい」と出馬を促しています。
岸田氏の不出馬については、
豪雨災害の対応、北朝鮮問題をはじめとした外交などを列挙したが、それらがどうして不出馬の理由になるのかよくわからない
と指摘。
豪雨災害の後だから、総裁選をやるべきでないという意味か。それとも、出馬して首相の無投票当選を阻止するのは、悪いことだと言いたいのか。本末転倒の理屈に聞こえる
と批判しています。
基本的な価値観を共有する候補が競う総裁選の政策論争は、勝者ばかりでなく敗者の提案にも意味がある。政府の政策に反映できるものも多かろう。政党の総合力を引き出す機会を活用しない手はない
と訴えています。
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