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知事「承認撤回」 辺野古工事 一時停止へ…政府は推進 影響 限定的か

台風、夜にも上陸 東から西 異例の進路 大雨警戒

山口俊 ノーヒットノーラン

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沖縄県知事、辺野古埋め立ての承認「撤回」を表明

アメリカ軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設をめぐって、沖縄県の翁長知事は昨日、2013年12月に当時の仲井真知事が行った埋め立ての承認を撤回する考えを表明しました。
撤回の理由について翁長知事は、国が「全体の実施設計や環境対策」を示さずに工事に着工したこと、サンゴ類を移植せずに着工したことに加えて、埋め立て予定海域の地盤が軟弱であることなど「承認時には明らかにされていなかった事実が判明した」などと説明しました。
今後、国から反論を聴く「聴聞」の手続きを経て撤回が実行されれば、移設工事は停止することになります。
翁長知事は、「今後もあらゆる手法を駆使して辺野古に新基地を造らせないという公約の実現に向け全力で取り組む」と述べました。
これに対して菅官房長官は会見で、「おととしの最高裁判所の判決の趣旨に従い、国と沖縄県の双方が互いに協力して誠実に対応し、辺野古沿岸域の埋め立て工事を進めていくことが求められていると認識している」などと述べ、辺野古への移設工事を進める考えを示しました。
政府は、沖縄県が埋め立て承認を撤回した場合、法的な対抗措置を取る方針です。

2013年12月に当時の仲井真知事が行った埋め立ての承認の効力をなくす手段としては、承認前の審査に法的な問題があった場合の「取り消し」と、承認後の事業者の違反行為などを理由とする「撤回」の2つがあります。翁長知事は2015年10月に承認の「取り消し」を行いましたが、2016年12月に翁長知事の「取り消し」を違法とする最高裁判決が確定していました。
こうした経緯もあり、翁長知事にとって、埋め立て承認の「撤回」は、最後に残された切り札です。

このタイミングで「撤回」のカードを切った理由について、朝日新聞のきょうの記事「(時時刻刻)撤回、翁長氏の切り札 辺野古、土砂投入迫り表明」は、

国は今月19日、投入する海域を護岸で囲い終え、県にはすでに投入の予定日を8月17日と通知している。手続きに入ってから実際に撤回するまでは3週間はかかるとみられ、土砂投入前に撤回して工事を止めるにはぎりぎりだ。
知事選をにらみ、自身の求心力を高める狙いもある。(略)県幹部は「(土砂投入の開始で)攻勢を強める政府の前に県民の心が折れては、どうしようもなかった」と解説する

と説明しています。
ただ、翁長知事の埋め立て承認「撤回」に対して国は法的な対抗措置をとる構えです。読売新聞のきょうの記事「[スキャナー]翁長氏 窮余の策…辺野古「承認撤回」 知事選へ求心力狙う」は、

今回の埋め立て承認撤回は、翁長氏にとって「移設阻止の最後のカード」(県幹部)とされる。
ただ、これも勝算があるわけではない。県は撤回の理由として、政府側の対応に問題があったと強調しているが、県関係者でさえ「ほぼ難癖に近い。訴訟になれば99%負ける」と漏らす。翁長氏も27日の会見で「法的には政府側に分ぶがあるかもしれない」と認めざるを得なかった。県幹部は「玉砕撤回だ」と自嘲気味に語る

と伝えています。
辺野古への移設工事を法的な手段で阻止するのが難しい状況の中で、ことし11月に行われる予定の沖縄県知事選挙で示される沖縄県民の民意も大きな焦点となります。
毎日新聞はきょうの社説「辺野古埋め立て工事 知事選を待った方がよい」で、

分断と対立をできる限りなくすのが政府の務めではないか。そのためには知事選の結果を待ったうえで土砂投入の是非を判断した方がよい

と主張しています。

翁長知事の埋め立て承認「撤回」めぐる各社の主張

日経新聞を除く4紙がこの件についてきょう社説を掲載しています。
朝日新聞と毎日新聞が政府を批判しているのに対して、読売新聞と産経新聞は翁長知事を批判。「リベラル」メディアと「保守」メディアの主張が真っ向から対立しています。

朝日新聞

朝日新聞はきょうの社説「辺野古工事 目にあまる政府の背信」の中で、

 今回、県に「撤回」を決断させた最大の要因は、今月初めに沖縄防衛局が県側に部分開示した地質調査報告書の内容だ。埋め立て用の護岸を造成する沖合の海底の一部が、砂や粘土でできていて、想定とは大きく異なる軟弱地盤であることを示すデータが多数並んでいた。

 地盤工学の専門家によると、難工事となった東京・羽田空港の拡張現場の様子に似ていて、「マヨネーズくらい」の軟らかな土壌が、深さ40メートルにわたって重なっている。政府が届け出ている設計や工法では建設は不可能で、その変更、そして費用の高騰は避けられないという。

 驚くのは、報告書は2年前の3月に完成していたのに、政府は明らかにせず、県民や県の情報公開請求を受けてようやく開示したことだ。加えて、「他の調査結果を踏まえて総合的に強度を判断する」として具体的な対策を打ち出さず、工法の変更許可も申請していない。

 他の部分の工事を進めてしまえば、引き返すことはできなくなる。設計変更はそれから考えればいい。予算はいくらでもつける。秋には知事選が予定されているので、政府に理解のある候補者を擁立して、県の抵抗を抑えこもう――。そんなふうに考えているのではないか。

と指摘し、国の対応を問題視しています。
こうした「県と県民を裏切る行い」はこれまでも繰り返されてきたとして、

 権力をもつ側がルールや手続きを平然と踏みにじる。いまの政権の根深い体質だ。これでは民主主義はなり立たない。

と批判。

 安倍首相は「(16年末の)最高裁判決に従って、辺野古への移設を進める」とくり返す。だが判決は、前知事の埋め立て承認に違法な点はないと判断したもので、辺野古に基地を造れと命じたわけではない。

 軟弱地盤という新たな事実が判明したいま、新たな対応が求められるのは当然である。

として、政府に対して「新たな対応」を求めています。政府は県民や国民に「納得できる説明をしなければならない」と主張しています。

毎日新聞

毎日新聞はきょうの社説「辺野古埋め立て工事 知事選を待った方がよい」の中で、

 撤回によっていったん工事は止まるが、国側は裁判所に撤回の執行停止を申し立てるなどの対抗措置をとる構えで、撤回の効力は一時的なものになりそうだ。

と、国が対抗措置をとれば翁長知事による埋め立て承認「撤回」の効力は一時的なものになるとの見通しを示しています。その上で、

 撤回が裁判で認められる勝算があるとはいえず、県庁内にも消極論がくすぶっていた。それでも翁長氏が撤回に踏み切る決断をしたことは、11月の知事選を前に移設反対派の置かれた苦しい状況を物語る。

 翁長氏自身が健康不安を抱え、移設反対派の知事選候補が定まらない中、土砂投入の開始を遅らせることで求心力を保つ狙いもあるようだ。

などと解説。
また、普天間基地の辺野古移設をめぐって国と沖縄県の対立が続いてきたことについて、

 普天間飛行場の危険性は誰の目にも明らかなのに、辺野古への移設をめぐって国と県の関係がここまでこじれた原因は安倍政権の強権的な姿勢にあるといわなければならない。

 4年前の知事選で示された民意と向き合うどころか、移設反対派を抑えつけ、県との対立をエスカレートさせてきた。今年2月の名護市長選では現職を落選させるため、補助金を使って住民の分断をあおった。

 こうした政権側の姿勢を翁長氏は「傍若無人」と批判している。

 分断と対立をできる限りなくすのが政府の務めではないか。そのためには知事選の結果を待ったうえで土砂投入の是非を判断した方がよい。

と指摘。政府の姿勢を批判し、ことし11月の沖縄県知事選挙で示される民意を待つべきだと主張しています。

読売新聞

読売新聞はきょうの社説「辺野古移設問題 承認撤回は政治利用が過ぎる」の中で、
辺野古移設問題 承認撤回は政治利用が過ぎる
2018年07月28日 06時04分

 工事を止めるために手段を選ばない。政府との対立をあおるかのような姿勢は甚だ疑問だ。

 翁長氏は撤回の理由について、サンゴの移植など環境保全措置が不十分だと主張したほか、埋め立て海域の災害防止の協議に政府が応じない、と批判した。

 政府は、希少なサンゴについては移植の準備を進めている。県との協議も定期的に行っている。県の主張は一方的ではないか。

 県は、「撤回」は承認後の違反が理由であり、「取り消し」に関する最高裁判決は影響しない、と主張している。

 政府の法的な正当性を認定した司法の判断を軽視するものだ。工事停止ありきの姿勢は、強引との批判を免れまい。

などと、今回の翁長知事の判断を批判しています。

 沖縄では11月に知事選が行われる。翁長氏は4月にがんの手術を受け、出馬するかどうか明言していないが、工事を遅らせることで基地問題に再び焦点をあてようとしているのだろう。

 国家の安全保障にかかわる問題を政争の具とすべきではない。

 辺野古移設は普天間飛行場の危険性を除去し、米軍の抑止力を維持する現実的な選択肢である。

として、政府が進める普天間基地の辺野古への移設を支持しています。その上で、

 政府は移設の重要性を地元住民に丁寧に訴え、理解を得る努力を続けなければならない。

と主張しています。

産経新聞

産経新聞はきょうの社説「辺野古埋め立て 知事は「承認撤回」中止を」の中で、
辺野古埋め立て 知事は「承認撤回」中止を

 米軍普天間飛行場の辺野古移設は、平和のための抑止力確保と普天間周辺の県民の安全を両立させるためのものだ。その意義は、いささかも減じていない。

 県民を含む国民の安全確保と、北東アジア地域の平和の保持に逆行する誤った対応である。翁長氏は撤回手続きを中止すべきだ。

 11月には、翁長氏の任期満了に伴う県知事選がある。

 撤回劇を演じることで移設反対の世論をかき立て、選挙戦を有利にしようとする思惑があるとみられても仕方ない。

などと、政府が進める普天間基地の辺野古移設の意義を強調するとともに、翁長知事を批判しています。

 国は希少サンゴの移植など環境保全に取り組んできた。埋め立て承認自体を撤回すべきほどの不手際が国側にあるとはいえまい。

 菅義偉官房長官が会見で、県の通知には法令に従って対応するとした上で、「移設工事を進める考え方に変わりはない」と述べたのは極めて妥当だ。

として、政府を支持しています。さらに、

 翁長氏は会見で、米朝首脳会談などが「緊張緩和」をもたらしたため、辺野古の埋め立ては「もう理由がない」と語った。これも誤りである。

 北朝鮮は核・弾道ミサイルを放棄しておらず、依然として脅威である。尖閣諸島(沖縄県石垣市)をねらう中国の軍事的圧力は高まっている。これを理解しない翁長氏の情勢認識は間違っている。陸上自衛隊の石垣島配備受け入れと協力を表明した中山義隆石垣市長に学んだらどうか。

と指摘し、安全保障の観点からも翁長知事を批判しています。

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