長崎県・諫早湾の干拓事業とは、農地の造成と低地の高潮対策を目的に国が1986年に着手した事業で、1997年には全長約7キロの堤防で締め切り、農地と調整池を整備した。
この事業をめぐり、有明海の漁業者は漁業被害を訴え、堤防の排水門を開けるよう求めている。これに対して干拓地の農業者は、開門すれば海水が入り込み塩害などの被害が出るとして開門に反対している。
2010年には堤防の排水門を開けるよう命じる判決が確定したが、国はこの確定判決に従わず制裁金を支払いつつ、判決の効力をなくすよう求める裁判を起こしていた。
一方、別の裁判では開門を差し止める判断が示され、開門すべきか否か、正反対の司法裁判が示されてきた。
福岡高等裁判所は、「漁業者側が開門を求める前提となる漁業権がすでに消滅している」などとして、2010年の判決を事実上無効にする国側勝訴となる判決を言い渡した。
これで司法裁判の「ねじれ」は解消されるが、漁業者側は最高裁に上告する方針で、この問題はさらに長期化する見通し。