1面読み比べ
アルゼンチンで行なわれているG20(主要20か国・地域)財務相・中央銀行総裁会議で、トランプ政権が引き起こす貿易摩擦に対する懸念の声が各国から相次いでいることを、朝日新聞と読売新聞が1面で伝えています。
また、日経新聞と読売新聞は、それぞれが実施した世論調査の結果を報じています。日経の世論調査では、内閣支持率は45%で不支持の47%が上回りました。読売の調査では、内閣支持率・不支持率はともに45%です。
産経新聞は、政府が秋田県と山口県に1基ずつ導入する計画のミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の導入費用について、防衛省が2基で総額6000億円以上になると試算していることがわかった、と報じています。これまで主要装置について「2基で約2000億円」と説明してきましたが、関連施設を含めると費用が膨れ上がった、と解説しています。
読売新聞は、1941年の日米開戦の前日夜に東条英機首相が政府高官に対して語った内容を記したメモが見つかった、と報じています。天皇が開戦を決意したことなどから高揚する東条首相の胸中を伝える貴重な資料だ、としています。
朝日新聞は、工業製品の品質などの基準を定めた「JIS」の認証機関が、不十分な審査で企業に認証を与える不正をしていたことをわかった、と報じています。この機関に対する認証機関としての認定を取り消す処分は今月12日に出されていましたが、処分理由は説明されていなかったということです。
日経新聞は、アメリカの減税やアジアでの設備投資重要などを背景に景気が拡大する一方で、アメリカと中国の間の貿易摩擦への懸念もあり、世界景気が「不安を抱えながら拡大している」と伝えています。
毎日新聞は、2020年の東京五輪の競技日程をめぐり、競泳の決勝がアメリカのテレビ放送のゴールデンタイムに当たる午前に決着したことについて、「テレビマネーが大会運営を大きく左右する五輪の現実を象徴していた」などと背景を伝えています。
朝日新聞 1面記事一覧
品質認証機関が不正 JIS、無資格や手抜き 英大手の日本支店
貿易摩擦、G20対立 米と各国、通貨安も火種
旧優生保護法の違憲性、国は見解示さぬ方針 強制不妊
五輪=ミライトワ パラ=ソメイティ 東京五輪マスコット名
毎日新聞 1面記事一覧
Moment’18夏 東京五輪まで2年/1(その1) テレビマネー大会左右 競泳決勝、一夜で「米ゴールデンタイムに」
20年東京五輪・パラリンピック マスコットの名前決まる 「ミライトワ」未来よ永遠に/「ソメイティ」力強く染める
西日本豪雨 海にも爪痕 漂流ごみ、欠航や漁網被害
日経新聞 1面記事一覧
世界景気、不安抱え拡大 米減税やアジア需要けん引 貿易戦争の激化懸念
日本は外需頼み 力欠く消費、所得改善の実感薄く
5Gインフラ、地方に 全国で実証事業 自動運転や災害検知
内閣支持45%、7ポイント減少 本社世論調査 参院6増法「反対」56%
読売新聞 1面記事一覧
東条 開戦前夜「勝った」 太平洋戦争 対面の高官メモ
G20 貿易摩擦へ懸念 人民元安 対立火種に
カジノ法「評価せず」62% 本社世論調査 内閣支持横ばい45%
名前 決まったよ
産経新聞 1面記事一覧
陸上イージス 2基6000億円超 防衛省試算 施設費含め想定の3倍
中国 海底資料サンプル採取か 沖縄沖 無人潜水機を運用
火星15年ぶり大接近 ピークは31日
歴史の交差点 武蔵野大特任教授 山内昌之 中東 手腕異なる独裁者
愛子さま、英国にご出発 短期留学
今日の社説
朝日新聞
毎日新聞
日経新聞
読売新聞
産経新聞
社説読み比べ
日経新聞は今日の社説「なお拭えないカジノの懸念 」で、カジノを含むIR整備法案が成立したことについて、
カジノにはギャンブル依存症や反社会的勢力の介入、マネーロンダリング(資金洗浄)の懸念といった問題が指摘されてきた。だがこれまでの国会審議を通して、こうした不安が解消され、国民の理解が高まったとは言いがたい
なお多くの疑問や反対の声がある中での、「国策」としての導入である。政府はいままでのような不明確な対応では許されない。法律が成立したことで安堵することなく、不安を払拭するための取り組みなどを強めるべきだ
と、批判的に受け止めています。
これで、5紙すべてがIR整備法案の成立について今日までに社説を掲載しました。厳しく批判する朝日や毎日から、批判をトーンダウンさせた産経までやや幅はありますが、5紙いずれも課題や懸念点を指摘していて、積極的に賛成する社はありません。
東京都が国歌斉唱で起立しない職員の再雇用を拒否。最高裁「合法」判決
入学式や卒業式における国家斉唱の際に起立しなかったことで処分を受けた東京都立高校の元教職員22人が、それを理由に定年後の再雇用を拒まれたのは違法だと訴えた裁判で、最高裁は今月19日、再雇用を拒否した東京都の判断を合法とし、原告側が敗訴しました。
1審では都の対応が「裁量権の範囲の逸脱・乱用にあたる」などとして東京都側に賠償を命じ、2審も支持していました。これに対し最高裁は、不起立について「式典の秩序や雰囲気を一定程度損なうもので、生徒への影響も否定できない」などとして1審・2審の判断を覆しました。
この判決に対する各紙の主張
この最高裁の判断について、産経は支持し、朝日と毎日は批判しています。日経と読売はこれまで社説で取り上げていません。
産経新聞は今日の社説「「不起立教員」敗訴 国旗国歌の尊重は当然だ」の中で、
当然の判決である
と判決を評価。
門出などを祝う重要な節目の行事で、一部教職員が座ったままの光景がどう映るか。生徒らを顧みず、教職員個人の政治的主張や感情を押しつけるもので、教育に値しない行為だ
と指摘しています。また、国歌斉唱の際の起立・斉唱の職務命令に対する批判があることについては、
国旗と国歌を尊重するのは国際常識であり、強制とは言わない
と主張しています。
これに対して、朝日新聞は7月20日の社説「君が代判決 強制の追認でいいのか」の中で、
憲法が定める思想・良心の自由の重みをわきまえぬ、不当な判決と言わざるを得ない
と判決を批判。
戦前の軍国主義と密接な関係がある日の丸・君が代にどう向きあうかは、個人の歴史観や世界観と結びつく微妙な問題だ。二審の東京高裁はその点を踏まえ、「起立斉唱しなかっただけで、不合格とするような重大な非違行為にあたると評価することはできない」と述べ、都教委側に損害賠償を命じていた。この方が憲法の理念に忠実で、かつ常識にもかなう
として、2審の判決を支持しています。
個人の尊厳を重んじ、多様な価値観を持つことを認めあう。そういう人間を育て、民主的な社会を築くのが教育の使命だ。そして、行政や立法にそれを脅かす動きがあれば、権限を発動してストップをかけることが、司法には期待されている。その両者が役割を果たさなければ、社会から自由や多様性は失われる。この判決を受け入れることができない理由である
と主張しています。
毎日新聞は7月22日の社説「君が代「再雇用拒否」判決 行政の裁量広げすぎでは」の中で、
採用側の裁量を広く解釈しすぎていないか
と判決を疑問視。
再雇用は定年後の人生設計を左右する。9割超が再雇用されていた実態もあった。規律違反と不採用という結果の均衡が取れているのか。今回の最高裁判決には疑問が残る
日の丸・君が代との向き合い方は人それぞれだ。戦前の軍国主義と結びつける人もいれば、国旗・国歌として自然に受け入れる人もいる。ただし、一方の考え方を力で抑え込めば、最高裁が指摘したように、憲法が保障する思想・良心の自由に抵触しかねない
と指摘しています。
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