senkyoseido.jpg

見出し

ニュース

参議院の選挙制度「定数6増」の自民党案が参議院を通過

参議院の選挙制度をめぐっては、「1票の格差」を是正するために2015年の公職選挙法改正で「合区」が導入され、鳥取県と島根県、徳島県と高知県がそれぞれ1つの選挙区となりました。
自民党は、憲法を改正して「合区」を解消することを目指しましたが、来年の参院選挙までの実現が困難な中、参議院議員の定数を6増やすことになる公職選挙法改正案をまとめました。
この案では、議員1人あたりの有権者数が最も多い埼玉県の定数を2増やして1票の格差を3倍未満に抑えます。
また、比例代表の定数を4増やした上で、政党があらかじめ決めた順位に従って当選者が決まる「拘束名簿式」を一部選択できる「特定枠」を設けます。この「特定枠」は、「合区」のために選挙区に候補者を擁立できない県から確実に議員を出せるようにするための救済措置です。
自民党案に対しては、議員定数を増やすことへの批判や、「特定枠」導入について「党利党略でご都合主義だ」などの批判があります。
公明党や野党は対案を出しましたが、自民党案が7月11日に参議院本会議で可決されました。法案は衆議院に送られ、今国会で成立する見通しとなっています。

賛否両論(参院定数6増の自民党案)

自民党案への批判

  • 人口が減少する中での定数増は国民の理解を得られるのか
  • 制度が複雑でわかりにくい。自民党の党利党略でしかない

自民党案のポイント

  • 選挙区で2、比例区で4、合わせて定数を6増やす
  • 「合区」救済策として「特定枠」を設け、比例区の定数を増やす

新聞各社の主張(自民党案への賛否)

朝日新聞(2018年7月12日社説反対

朝日新聞の社説『参院選挙制度 自民の横暴、極まれり』では、

選挙制度は民主主義の根幹にかかわる。それを委員会での審議わずか6時間ほどで、政権党が独断で変えてしまう。まごうことなき暴挙であり、民主主義の破壊である

と厳しく批判。比例区に設ける「特定枠」については、「合区」対象県の議員の救済策だと指摘し、

あまりのご都合主義に、あぜんとする

とコメント。他党も対案を提出し、選挙制度の「抜本改革の芽はあった」と指摘した上で、

それらを自民党が一蹴し、公明党も最後は従った。民主主義の危機を強く印象づける与党の暴走である

と与党を強く非難しています。

毎日新聞(2018年7月12日社説反対


毎日新聞の社説『「合区救済」法案が成立へ 参院は主権者を遠ざけた』
では、

投票価値の平等を目指す抜本改革にはほど遠く、自民党の身勝手な都合で参院を私物化するのに等しいと私たちは反対してきたが、与党が数の力で押し切った

と批判。比例区に設ける「特定枠」については

合区制度の本来の目的を否定する「裏口入学」にほかならない

と指摘しています。この「特定枠」をやめて、対案を出した野党の主張をとりいれる選択肢もあったと主張。

国民と国会をつなぐのが選挙制度だ。それを党利党略でもてあそび、主権者を遠ざけた参院の罪は重い

と非難しています。

日経新聞(2018年6月2日社説反対

日経新聞は、自民党案が参院を通過した7月11日以降はまだ社説で取り上げていません(※2018年7月13日時点)。ただ、自民党案が既に固まっていた6月2日に社説「参院の定数増は容認できない」を掲載しています。

選挙は民主主義の土台であり、特定の政党の都合で制度をゆがめることがあってはならない。その意味で、自民党が作成した参院選挙制度の改革案はおよそ「改革」とは呼べない。人口減の時代に定数を増やすのも、有権者の理解を得られまい。直ちに撤回して再検討すべきだ

と厳しく批判しています。
「合区」対象県の議員を救済する狙いで「特定枠」を導入し、比例区の定数を増やすことについても、

こんな露骨な党利党略は聞いたことがない

と非難しています。

読売新聞(2018年7月13日社説反対

読売新聞の社説「参院選挙制度 弥縫策は混乱を広げるだけだ」では、自民党案を「弥縫策に過ぎず、改革の名に値しない」として、

2015年の改正公選法付則は、抜本的な見直しについて「結論を得る」と明記した。選挙の約1年前になって、自らに都合の良い改正案を急きょ提示し、実現を図る自民党の姿勢は疑問だ

と批判しています。政党があらかじめ決めた順位に従って当選者が決まる「拘束名簿式」を一部選択できる「特定枠」を設けることは事実上の拘束名簿式になると指摘し、

有権者には極めて分かりにくい。各党や選挙管理委員会は制度の周知に努め、混乱を避けねばならない

と、特に問題視。この制度は自民党が「合区」の影響で選挙区から立候補できなくなる議員の救済措置であることについては、「党利党略との批判を免れない」と批判しています。
一方で、野党などが批判する議員定数の増加については、

参院は、3年ごとに半数ずつ改選されるため、各選挙区に最低2人を割り振らねばならない。定数を維持したまま、格差を是正するのは限界がある。定数増に踏み込んだのはやむを得ない

と理解を示しています。

産経新聞(2018年7月13日社説反対

産経新聞の社説「公選法改正案 参院無用論を広げるのか」では、自民党案では定数が増えることについて、

人口減少に対応し、地方議会が定数減を進めていることを忘れてもらっては困る。範を示すべき参院が安易に定数増に走るのでは、「良識の府」を自任することをやめたほうがいい

と批判。政党があらかじめ決めた順位に従って当選者が決まる「拘束名簿式」を一部選択できる「特定枠」を設けることについても、

比例代表が、順位をつけない非拘束名簿式なのか、拘束名簿式なのか、制度の趣旨さえ分からなくなる

と指摘しています。野党などがまとめた対案の方が「まし」だとして、

国会閉会後も与野党で協議を続け、秋に想定される臨時国会で、もっとましな内容の改正案を成立させるべきだ

と主張。「厚顔無恥な対応は参院無用論を広げるだけだ」と厳しく批判しています。

社説読み比べ

日頃から安倍政権の政策に反対することが多い朝日・毎日だけでなく、安倍政権の政策に肯定的な態度を示すことが多い読売・産経も、その中間である日経も含めて、主要5紙は全て自民党案を批判しています。

オピニオンリーダーの声