もくじ

引き続き、7月3日の「党首討論」の内容を紹介します。きょう見ていくのは、外交・安全保障に関する質疑応答部分です。

公明・山口代表「日米安保条約は双務的だ」

山口代表への質問

先ほどトランプ大統領の安保(条約)見直し論については、片務性については先ほど党首の討論の中にもありましたので、山口さんにお伺いしたいんですけども、これはおそらく、これからアメリカの政権がどうなるかというともありますけれども、もう前からこういうことをアメリカ側から強い不満として出てきている。
それで日本は日本としての立場を言っている。それはおそらくこれから続くでしょう。そういう時に、それに対してやっぱり備えがないないとね、「いやいや日本もそれなりに片務性じゃありません」と、そう言い続けてるだけで済む話なのかと。その点はいかがでしょうか。

日米安保条約について、自民党と連立政権を組む公明党の山口代表にアメリカとどう向き合っていくのかを質したで。
トランプ大統領が「日米安保条約は不公平だ」と不満を隠そうとしないなか、難しい課題じゃ。

山口代表の回答

これはアメリカの安全保障の専門家から言えば、アメリカの日本を防衛する義務と、それから日本が基地を日本側で提供している、それによってアメリカが日本のみならずアジア地域に展開することが可能で、また質も高い補給や補修のできる能力を日本が提供することで膨大な利益を得ている。そのことをアメリカの専門家はよくわかっている。だから、双務性が実質的にあると理解しているわけであります。そのことを、もっとアメリカの方々にきちんと認識していただく必要があると思います。
「アメリカが攻撃されたら日本が助けに行く」なんていうことが実際に起こるとしたら、それはもう国際的に大変な事態でありますから、そういうことを想定して双務性を議論すべきではないと、このように私は思います。

山口代表は、日本はアメリカに基地を提供していて、日米安保条約は双務的だと説明しました。
アメリカの専門家はよくわかっているから、多くの人に認識してもらう必要がある、という主張だわ。
専門家が理解していても、アメリカの世論に、というかトランプ大統領にちゃんとわかってもらえるか、楽観視はできなさそうだネ。

立憲・枝野代表「日米安保体制の健全な発展を目指す」

枝野代表への質問

よく日本の外交はアメリカに従属しているという批判もあるんですけれども、しかし、アメリカ側がさかんに安保条約の片務性については、いま山口さんから「わかってる人はわかってる」っていうお話でしたけども、しかし依然としてそういう要求は来るでしょう。
そのときに、これは、やはり野党としてもこれから政権を取ろうとする野党としても、それに対して一体どうしたらいいのかということは当然ね、なければいけないということだと思うんですよ。それについてはやはり、そのためには日本が自主的な防衛努力だってしなければいけないと考えるか、それはやはりこの日米安保条約があるんだから、それにやはり多くの比重を割いて(アメリカに)日本を守ってもらおうと考えるか、どちらですか

野党第1党である立憲民主党の枝野代表に、安全保障の基本姿勢を質したで。
自主防衛に力を入れるのか、アメリカに守ってもらうことを重視するのか。ちょっと乱暴な2択な気もするがのう。

枝野の回答

立憲民主党は明確に、日米安保体制堅持です。健全な発展を果す目指すという立場です。
そしてこれは安倍さんとも山口さんと一致していますが、日米安全保障条約は双務的な関係だと。アメリカにとって、この地政学的な場所に安定的な基地を持っているということは、アメリカの国益に大変資する状況である。これにもっと自信を持つべきであって、専門家だけではなくて、アメリカの国民などにも伝わるようにですね、もっとこれは、日本が一方的に守ってもらっているのではない。アメリカの国益に資するんだということを、日本の政治家、特に政府が明確に発信する必要がある。
日本はそこは残念ながら弱腰であるというかですね、腰が引けているので、一方的に守られてるんではないかと勘違いしている人が日本の国内にもアメリカにもたくさんいる。これはしっかりとアピールしていく必要があるというふうに思っています。

日米安保に関する枝野代表の回答は、公明党の山口代表とほぼ同じ見解だわ。
でも、立憲民主党も含めて野党は、自衛隊が米軍を守ることを可能にした安保関連法の廃止を訴えているよネ。これは「日米安保を堅持する」姿勢と矛盾しないのかナ。
憲法解釈をねじまげる安倍政権のやり方は不健全だ、という主張なんじゃないですかね!

自民・安倍総裁「拉致問題は努力しているが詳細は言えない」

安倍総裁への質問

安倍さん、日朝なんですけどね、拉致問題なかなか進まない。そういう中であの手この手で、それはもう直接、条件なしに直接日朝首脳会談というところまで、日本はある意味ではカードを切ってるっていう感じがするんですね。一体、いろんな形の試みをされてるんでしょうけども、一体その日朝首脳直接会談に向けて、いったい何合目まで行ってるんですか
中身は言えないでしょうけど、一体進み具合は。そのことによって、心配している日本国民の中にも「そうかそこまで進んでるのか」ということで理解が得られると思うんですけれども、いったい何合目なんですか。

安倍総理は拉致問題の解決を目指してきたんじゃが、残念ながら成果にはつながっておらんのう。
北朝鮮との交渉の中身は言えないにしても、いま何合目まで来ているのかを問いただしたで。

安倍総裁の回答

私は国会議員になって25年以上、拉致被害者のご家族の皆様と共に戦ってまいりました。ご家族の皆様がご高齢になり、そして私自身が総理大臣になりながら、いまだに解決できない本当に痛恨の極みであり、申し訳ない思いであります。
その中で何とか解決をしたいとの思いで、トランプ大統領からは私の考え方、金正恩委員長に伝えていただいた。また習近平主席からも伝えていただきました。そして拉致問題を解決すべきだということを強く、それぞれ金正恩に伝えてもらった。
その中で、厳しい制裁はかけ続けている。この政策は実は変わりがありません。しかしその中において、対話する上においてはですね、条件はつけないということを申し上げているところでありまして、あらゆるチャンスを逃がさないとの思いでこの問題の解決に当たっていきたい。今あらゆる努力を私もしているところであります。
詳細について申し上げることはできませんし、今何合目ということが言えたらどんなにいいんだろうと、本当にそう思ってます。

アメリカ、中国、ロシア、韓国といった諸外国が北朝鮮の金正恩委員長と首脳会談を行うなか、日朝首脳会談はまだ実現していないネ。
安倍総理は、アメリカや中国の首脳を通じて金正恩委員長にメッセージを届けていると説明した上で、解決にむけて努力していると訴えたわ。
「何合目まで来ているのか」という質問に対しては、回答を避けました。

自民・安倍総裁「韓国への措置はWTOに反しない」

安倍総裁への質問

安倍さんに、日韓関係についてお尋ねします。政府がですね、徴用工問題で事実上の対抗措置をとりました。これは歴史認識問題を通商政策と絡めるというのはですね、トランプさんみたいなやり方なんですが、あまり良くない。両国にとって良くないだろうと皆が心配しています。これはどういう形で決着させるっていう絵が、今の段階で描けているんでしょうか。

日本政府が、韓国に対する半導体の材料の輸出を厳しくする措置をとったことについて質しました。
自由貿易の旗振り役のはずの日本がこんなことをすべきじゃないと思うわ。

安倍総裁の回答

その認識ははっきり申し上げて、間違いです。歴史問題を通商問題にこれはからめたのではありません。徴用工問題というのは歴史問題ではなくて、国際法上の国と国との約束を守るのか、ということであります。
1965年に請求権協定において、互いに請求権を放置した、これは国と国との約束なんです。この約束をたがえられてしまったらどうなるのかというとですね、またあるいは、慰安婦の合意、これは首脳間、外務大臣間の合意です。国連も、当時のオバマ大統領もこの合意を評価しました。
こうした合意が守られていない。国際約束が守られていないという問題であって、あなたの認識は間違っています。
その中において、今回の措置はWTOに反している措置ではなくて、貿易管理の問題であって、これは「ワッセナー・アレンジメント」という国際的なルールがあります。日本も入っている。安全保障上のための貿易管理をそれぞれの国が果たしていかなければならないという実はこれ義務なんです。その義務の中において、相手の国が、詳細に申し上げれば、約束を守らないという中においては、今までの優遇措置は取れない。これ間違って報道してるところあるんですが、禁輸をするんではないんです。「いままでの優遇措置はとれませんね」ということでありまして、それは当然の判断なんだろうと思いますし、これはWTOに違反するという話では全くないということでございますから、どうか正しい認識を持っていただきたいと思います。

質問者の「歴史問題と通商政策をからめた」という指摘は間違いだと強調したで。
日本政府としては、韓国に対する優遇措置をやめたのであって、当然の判断だという立場だヨ。
韓国に多くの問題があるのが問題の根底にあるんじゃが、日韓関係の対立は行き着く先が見えないのう。

自民・安倍総裁「北方領土問題は日露の世論をみながら進める」

北方領土問題をめぐっては、ロシアとの交渉に進展が見えないことを安倍総理に問いただしたニャ。
質問者と安倍総理のやりとりは、以下の通りだニャ。

安倍総裁への質問

北方領土問題についてお伺いします。
昨年この場で自民党総裁選挙のときに安倍さんはプーチンさんの言葉を受け取ってですね「これから大事なことが起きますよ」っていう話をされました。
その後何が起きたかっていうと、固有の領土という言葉を封印したり、外交青書から「北方四島は日本に帰属する」という文言を削除したりしているようにしかお見受けできないんですが、残念ながら北方領土問題に関して進展が見られるとはとても思えません。これはどうなっていますか。

安倍総裁の回答

例えば何か威勢のいい言葉を発していればですね、領土問題が解決するのかということであれば、それは全く逆なんです。静かな環境の中で交渉を続けていく必要があります。
外交的な配慮をしつつ、何とかこの70年間解決できなかった問題を解決したいと思っています。
元島民の方々も相当お年をめしている中において、そうチャンスは長くはないという中においてですね、今やっとお互いの国民が理解し合えるような状況を作っていくという中において、8項目の経済協力もありますが、4島での経済活動、ともに初めて4島の島民と日本人が経済活動をして、富や豊かさを生み出していく。「やっぱり日本とやっていくのいいな」と思わせることが、お互いに思うことが大切なんですね。そこに今初めて入ることができた。
またあるいは元島民の皆さんがなかなか墓参、航空機で墓参できなかった。船で行くって大変なんです。ちょっと時化たらずっと行けませんから。航空機の墓参が実現できた。しかも墓参する場所もですね、先般もプーチン大統領が「人道的配慮はしなければいけない」と、「自分が担当省庁に指示する」と言ってですね、これ墓参ができる場所の範囲も相当広げてもらってます。
そういうことも進んでるんだということもですね、ぜひご理解をいただきたいと思います。

安倍総裁への質問

安倍さんがいつもそうおっしゃるのはよく聞いております。
もう1度だけ北方領土に関して安倍さんにお聞きしたいのは、安倍さんは「次の世代に先送りすることなく、必ずや終止符を打つとの強い決意を、プーチン大統領と共有した」と何度もおっしゃってます。安倍さんはおっしゃってます。でもこの同じフレーズをプーチンさんは一度もおっしゃっていない、公の場で。これはなぜなんでしょうか。

安倍総裁の回答

先般もですね、いわば(山口県の)長門でお互いに合意した「領土問題を私達の手で解決をする」っていう真摯な決意については共有したということを、これは事実上文書で確認をしているわけでありまして、そこは確認されているということであります。
ただお互いにそれぞれの世論がありますから、その中で世論とキャッチボールしながら前に進めていくということであろうと私は期待をしております。

安倍総理は、元島民の航空機による墓参の実現など成果を強調したで。
安倍総理が交渉の進展を強調するけど、ロシアのプーチン大統領からはそういう印象は受けません。
安倍総理は「世論とキャッチボールしながら前に進める」ことを「期待している」と述べたネ。
相手があることだから難しいわ・・プーチン大統領としては、ロシアの世論を意識せざるをえないわ。
山口代表は、日本はアメリカに基地を提供していて、日米安保条約は双務的だと説明しました。
北方領土を日本に返す、というのはロシアにとってはハードルが高いのう。やはりこの問題の解決はかなり難しいのが現実じゃ。

公明・山口代表「辺野古移設を進めるが、政府に努力を促す」

山口代表への質問

続いて沖縄問題をお伺いします、まず山口さんにお願いします。
辺野古の移設問題は、沖縄の県本部と党の方針が違っているようにお見受けしますが、これは典型的な二枚舌ではないんですか

在日アメリカ軍の普天間基地を辺野古に移設する計画について、公明党の中でも本部と沖縄県の主張が違うことを問いただしました。
党レベルでは賛成の立場なのに、沖縄県レベルでは反対、というのは「二枚舌」ではないかと追及したわ。

山口代表の回答

安全保障あるいは日本の防衛という大きな国の政策という観点で党としては考えております。
普天間の基地の危険性を取り除くということが出発点でありまして、その代替策として辺野古が選択肢として持ち上がった。これはもう以前の自公政権、そして民主党政権、また今の自公政権、長い間の交渉あるいは経過を経ての今の結論なわけであります。ですから、党としては、この国の安全保障・防衛政策を基本的に推進をしていくという立場です。
ただし、沖縄のやはり現地の県民感情あるいは沖縄の歴史に根ざす人々の考え、これは公明党の支持層ももちろんいろいろな考え方がある中で、県本部としてはそうした感情、気持ちを尊重しながら対応を示しているということでありまして、過去にもいろんな問題でそういうことはありました。
しかし現実的な対応を取るべく、政府にもっと努力をすると、沖縄の県民の理解を求める努力をするということを、党としては促していきたいと、このように思います。

公明党としては、辺野古への移設を進めていく立場だと説明したヨ。
一方で、沖縄県レベルでは、移設計画に反対の県民感情を尊重している、と求めたで。つまりは、党本部と県本部とで見解は異なるってことや。
沖縄県の民意は移設に反対しておるが、安倍政権を支える与党としては推進する立場じゃからのう。地元の理解を得る努力を促す、というのが精一杯じゃな。

【朝刊比較】5紙の1面記事&社説一覧

朝日新聞

毎日新聞

日経新聞

読売新聞

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