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「イージス・アショア」取得費用が高騰
2018年7月30日、防衛省は、イージス・アショアのレーダーにロッキード・マーチン社が提案する最新鋭レーダーを採用することと、これまで1基あたり800億円を目安として説明してきた取得費用(本体部分)が1基あたり約1340億円になることを発表しました。最新鋭レーダーを採用するために費用が高騰した形です。
また、30年間の維持・整備費用などを含めると、2基の取得にかかる経費は約4664億円になることも明らかにしました。
これまでの経緯
政府「イージス・アショア」導入を決定
2017年12月19日、政府は北朝鮮の弾道ミサイルに対する防衛能力を高めるため、「イージス・アショア」を2基導入することを決めました。
「イージス・アショア」とは、イージス艦のミサイル迎撃システムを陸上に配備するもので、日米が共同開発中の新型の迎撃ミサイル「SM3ブロックⅡA」を搭載すれば、2基で日本全国をカバーできるとされています。政府は、秋田県秋田市と山口県萩市の陸上自衛隊の演習場に1基ずつ配備する方針です。
米軍はイージス・アショアをルーマニアとポーランドに設置し、ハワイには実験施設があります。米軍以外がイージス・アショアを運用するのは、日本が初めてになります。
小野寺防衛大臣は記者会見で「イージス・アショアの導入によって、平素から日本を常時・持続的に防護できるようになり、弾道ミサイル防衛能力の抜本的な向上が図られると考えている」と、導入の意義を強調しました。
賛否両論
主な反対意見
- 北朝鮮をめぐる緊迫した情勢が緩和した中で必要なのか
- イージス・アショア導入にかかる費用が高すぎる
- 強力な電波による健康被害などに地元から不安の声
賛成意見
- 北朝鮮は核・ミサイルを廃棄しておらず脅威は変わっていない
- イージス艦と比べて必ずしも高額ではない
- 地元の不安を払拭し理解を得られるように努力すべき
新聞各社の主張(自民党案への賛否)
朝日新聞反対
朝日新聞は2018年8月1日の社説「陸上イージス 導入ありきは許されぬ」の中で、
ようやく芽生えた緊張緩和の流れに逆行するだけではない。費用対効果の面からも、やはりこの計画は、導入の是非を再考すべきだ
防衛省は来年度予算案の概算要求に関連経費を計上する方針だが、これだけ巨額の事業である。導入ありきで突き進むことは許されない
と、導入に否定的です。北朝鮮をめぐる緊迫した情勢が緩和している状況を説明した上で、
「北朝鮮の脅威は変わっていない」(小野寺防衛相)と強弁し、昨年来の計画に固執する姿勢は、幅広い国民の理解を得られまい
と指摘。
安倍政権はかねて北朝鮮の脅威を強調してきたが、防衛力強化の狙いは実のところ、中国への備えにあるとされる。米国に向かう弾道ミサイルの追尾情報を提供することになれば、米本土防衛の一翼を日本が担うことにもなる。近隣諸国との関係に与える影響を、冷徹に分析しなければならない。
配備候補地となった秋田、山口では、性急な政府への反発が強まっている。政府が目指す2023年度の運用開始は、米側の事情もあって、25年度以降にずれこみそうだ。
その時になって、巨費を投じた陸上イージスが無用の長物になっていないか。今こそ、徹底的な議論が求められる
と主張しています。
毎日新聞やや反対
毎日新聞は2018年8月7日の社説「陸上イージスの導入経費 青天井で膨れ上がる危険」の中で、
防衛省は価格高騰の要因としてレーダーの高性能化を挙げた。だが、日本全土を2基でカバーするため現行システムの倍以上の探知能力が必要になるのは分かっていたことだ
と指摘した上で、去年12月にイージス・アショアの導入を決定したことを「拙速に過ぎた」と批判しています。また、
日本政府は2023年度の導入を目指していたが、米側は1基目の配備までに約6年かかるとの見通しを示した。それでは来年度に契約しても25年度以降にずれ込む。導入決定を急いだ意味がない。
貿易赤字を減らすため米国製の兵器購入を迫るトランプ大統領の要求に手っ取り早く応えられるのが陸上イージスだったのだろう。
その足もとを見られ、安易に米側の言い値をのまされようとしているのではないか。レーダーなどの開発が遅れれば、青天井で価格が膨れ上がっていく危険がある。
費用対効果などで納得のいく説明がないままでは、配備先の自治体、住民が反対するのも当然だ
などと指摘。明言はしないものの、イージス・アショア導入に対して否定的です。
日経新聞やや賛成
日経新聞は2018年8月27日の社説「持続的に防衛力を高めていくには」の中で、
米朝融和が進むとみて、導入の中止を主張する向きがある。どこからミサイルを撃ち込まれても対処できるシステムの構築は、憲法が認める「専守防衛」に沿うものである。安保環境の少々の変動で左右されるべきではない
と指摘し、導入そのものについては賛成のスタンスです。
その一方で、当初は1基あたり約800億円と説明してきたものが1340億円に膨らんだことについて、
予算が成立すると急に増額が必要になるのは公共事業にありがちな話だが、ここまでの値上がりは極めて異例だ。見積もりが甘かったのではないか
本当に1340億円もかかるのか、再度の増額もあり得るのか、など、きちんとした説明なしに先に進むのは納得できない
などと指摘し、政府に対し丁寧な説明を求めています。
読売新聞やや賛成
読売新聞は2018年8月20日の社説「防衛力整備 費用対効果の視点を忘れるな」の中で、
地上配備型迎撃システム「イージスアショア」は、多数のミサイルが同時に撃ち込まれても対処できる能力を備える。費用対効果を十分に吟味し、導入の意義を明確にする必要がある
として、導入には賛成の立場です。その一方で、
防衛省のこれまでの対応は稚拙さが否めない
と指摘。
小野寺防衛相は昨年、1基の価格の見通しを800億円とした。今は1340億円に膨らんだ。維持費を含む総額を当初から示さなかったことも混乱を招いた。
米政府を通じて最新鋭の装備を購入する「対外有償軍事援助」を利用する。米国が価格設定を主導するとはいえ、金額が次々と増えていくようでは、防衛調達への信頼は損なわれよう。
配備予定の秋田、山口両県には、レーダーが放つ電波による健康被害を心配する声などがあり、反対論が強い。防衛省は地元に対する説明を重ね、理解を得る努力を続けなければならない
などと、問題点や課題を指摘しています。
産経新聞賛成
産経新聞は2018年8月2日の社説「陸上イージス 国民を守る上で不可欠だ」の中で、
日本をとりまく安全保障環境を考えれば、弾道ミサイルや巡航ミサイルの脅威が消え失せることは当面考えられない
外交努力と並行し、最悪の事態を見据え、国民を守る手立てを講じるのが防衛政策の基本である
と指摘した上で、
米朝首脳会談後の「偽りの緊張緩和」を鵜呑みにして、導入にブレーキをかける議論が出てきた。だが、実態はどうか。北朝鮮は、核・ミサイルを放棄していない。今、表面上はおとなしく振る舞っているが、米朝交渉の行方次第で強硬姿勢に戻る恐れはある
として、北朝鮮をめぐる緊迫した情勢が緩和していることを「偽りの緊張緩和」と表現。安全保障環境が油断できないとの認識を示しています。その上で、
陸上イージスの新型レーダーの探知距離は、海自イージス艦と比べ倍以上の千数百キロとなる。専守防衛の日本や同盟国米国にとって、北朝鮮や中露の動向を探る上で極めて有用だ
とイージス・アショア導入の意義を強調。
費用の増大が指摘されている。取得費は2679億円だが、運用、教育費などを含め30年間で4664億円かかる。弾(迎撃ミサイル)の調達を合わせ6千億円を超える見通しだ。
一方で、新型イージス艦2隻の30年間の運用費は7千億円である。陸上イージスが突出しているとはいえない。決して安くはないが、国民の安全を重視する観点から、導入を急ぐべきである
として、コストは決して安くないと指摘しつつも、国防の観点から「導入を急ぐべき」と主張しています。
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