北朝鮮国営の朝鮮中央テレビによると、北朝鮮の首都ピョンヤンで20日、朝鮮労働党の中央委員会総会が開かれ、キムジョンウン朝鮮労働党委員長が演説した。
キム委員長は「核開発と運搬攻撃手段の開発がすべて行われ、核の兵器化の完結が証明された状況で、もはやいかなる核実験も、中長距離・大陸間弾道ミサイルの発射実験も必要なくなり、北部の核実験場も使命を終えた」と述べた。
そして中央委員会総会で採択された決定書では、核実験とICBM(=大陸間弾道ミサイル)の発射実験を21日から中止し、北朝鮮北東部のプンゲリにある核実験場を廃棄する方針を示した。
決定書ではまた、「核の兵器化を実現した」「わが国に対する核の脅威や核の挑発がない限り核兵器を絶対に使わず、いかなる場合にも核兵器と核技術を移転しない」などとして、核保有国としての立場を改めて強調した。
ただし、北朝鮮は過去にも、核開発計画の放棄や弾道ミサイルの発射凍結を表明しながら再開してきた経緯があり、今後もその可能性は残る。
今回の発表は、27日に行われる予定の韓国との首脳会談や、6月までに行われる見通しのアメリカとの首脳会談に向けて、キムジョンウン体制の保証や制裁解除などを引き出すためにに交渉の主導権を握る狙いがあると見られる。

この北朝鮮の発表に対し、アメリカのトランプ大統領はツイッターで「とてもいい知らせで、大きな進展だ」と評価した。
韓国大統領府は声明を発表し、「北の決定を歓迎する。これは全世界が願う朝鮮半島の非核化のための意味のある進展だと評価する」とした上で、27日に予定されている首脳会談に向けて「南北首脳会談が朝鮮半島の非核化と恒久的な平和につながるよう、最善を尽くして準備する」と強調した。
ロシア外務省は声明で、「歓迎する。朝鮮半島の緊張緩和と北東アジア情勢の正常化に向けた前向きな動きを後押しする重要な一歩だ」と評価するとともに、アメリカと韓国に対して「軍事活動を抑制し、北朝鮮との首脳会談で相互に受け入れ可能な合意が達成できるよう、適切な行動をとるよう呼びかける」とけん制した。

関係各国が今回の北朝鮮の発表を評価する中、安倍首相は記者団に対し、「前向きな動きと歓迎したい。ただ大切なことは、この動きが核や大量破壊兵器、そしてミサイルの完全で検証可能かつ不可逆的な廃棄につながっていくかどうかだ。それをしっかり注視していきたい」と述た。
一方で、小野寺防衛大臣は記者団に対し、「北朝鮮の発表は満足がいくものではない。特に日本にとっては、中距離・短距離の弾道ミサイルの放棄には触れておらず、核の放棄にも触れていない。これでは不十分だ」「国際社会が求めているのは、完全で検証可能な不可逆的な方法ですべての大量破壊兵器およびあらゆる弾道ミサイルの計画を放棄することだ。国際社会による圧力を緩めるタイミングではなく、引き続き最大限の圧力を加え、北朝鮮の核・ミサイルの放棄を目指す姿勢に変わりはない」などと述べた。