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先週の政治振り返り

「テロ等準備罪」を新たに設ける組織犯罪処罰法の改正案が成立、可決し、6月18日が会期末だった国会は結局延長されることなく閉会しました。
野党は与党の国会運営が強引だと強く批判しています。法案を採決するためには、通常は委員会での採決で可決したのちに本会議で採決しますが、与党は委員会の採決を省略する「中間報告」という異例の手法を使い、法案の本会議での採決に踏み切ったためです。
背景には、学校法人「加計学園」の獣医学部設置をめぐる野党や世論の批判の高まりがありました。国会の会期を延長すれば野党の批判が長びき、政権へのダメージが深くなると政府・与党が懸念したとみられています。

6月15日(木)

アメリカの中央銀行、雇用情勢の改善を背景に利上げ実施を決定。

アメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は金融政策を決める会合で利上げを実施することを決めた。「0.75~1%の範囲」となっている今の政策金利を0.25%引き上げ、「1~1.25%の範囲」とする。
利上げの判断について、FRBのイエレン議長は記者会見で、雇用情勢の改善などを挙げた。
FRBはリーマンショック以降続けてきた「ゼロ金利政策」を2015年12月に解除し、利上げを始めた。その後、2016年12月、2017年3月、そして今回と、3か月ごとのペースで利上げを行ってきている。
FRBは今年あと1回、来年は3回利上げを行うというこれまでの見通しを維持し、長期的な金利水準を3%と想定している。

現在の「景気回復」戦後3番目の長さに

景気の動向を判断している内閣府の研究会によると、2012年12月から始まった景気回復が現在も続いており、戦後3番目の景気回復期間の長さとなった。
なお、戦後最長の景気回復は、2002年2月~2008年2月までの「いざなみ景気」。
戦後2番目の景気回復は、1965年11月~1970年7月までの「いざなぎ景気」(高度経済成長期)。
これまで3番目だったのは1986年12月から1991年2月までの「バブル景気」。
現在の景気回復は有効求人倍率が高く、円安で湧出企業の業績が好調な一方で、実質賃金は上がらず、景気回復の実感は乏しい。

「テロ等準備罪」新設法案が可決、成立

「テロ等準備罪」を新たに設ける組織犯罪処罰法改正案は参議院本会議で採決が行われ、自民党、公明党、日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。
法案は通常、衆議院および参議院の委員会で採決し、可決されたものが本会議で採決される。しかし今回の法案は、与野党が国会運営で激しく対立する中、参議院では委員会での採決を省略する異例の手続きを経て、本会議で採決が行われた。
改正組織犯罪処罰法は、6月21日にも公布され、7月11日に施行される見通し。

違法な天下り疑い事例、27件見つかる

文科省の天下り問題を受けて政府(内閣人事局)が行った全ての府省庁の調査結果がまとまった。違法な天下りの疑いある事例が27件あったものの、文科省のような組織的な天下りあっせんはなかったという。政府の再就職等監視委員会が今後、調査を引き継ぐ。

文科省、加計学園めぐる内部文書の追加調査結果を公表

学校法人「加計学園」が愛媛県今治市に獣医学部を新設する計画をめぐり、「官邸の最高レベルが言っている」などと記した文部科学省の内部文書について、松野文部科学大臣は追加調査の結果を公表した。
松野大臣は、民進党などが提示した19の資料のうち14の存在が確認できたとして「前回確認できなかった文書の存在が明らかになったことは大変申し訳なく、この結果を真摯に受け止めている」と謝罪した。
一方で、「官邸の最高レベルが言っている」と記した文書については、担当の文科省職員は「こうした趣旨の発言はあったと思うが真意は分からない」と話していると説明した。
また、行政がゆがめられたかについては、「プロセスや行政の過程がねじ曲げられたとは考えていない」と述べた。

6月16日(金)

内閣府、加計学園めぐる内部文書の追加調査結果を公表

山本地方創生担当大臣は会見で、8種類の文書の存在を確認したとする内閣府の調査結果を明らかにした。
焦点と成っている「官邸の最高レベルが言っている」と記した文科省の文書をめぐっては、内閣府が文科省側に伝えた認識はなく、安倍首相からもそのような指示はなかったと説明した。
「官邸の最高レベルが言っている」という発言について、文科省の調査では「こういう趣旨の発言はあったと思う」となっていることとの食い違いについては、「常々、安倍総理大臣は『スピード感を持って規制改革を断行するように』と言っているので、その辺を踏まえての発言を文部科学省がどう受け止めたかということだ」という解釈を示した。

天皇「退位」特例法案を公布

天皇陛下の退位を可能にする特例法はが公布された。特例法では、天皇陛下の退位する日は「公布から3年を超えない範囲内で政令で定める日」とされており、3年後の2020年6月までに天皇陛下が退位されることが確定した。退位後の称号は「上皇」となる。政府は今後、具体的な退位の日取りや新たな元号などの検討を進める。

公職選挙法改正案を公布。新たな区割りを適用へ

1票の格差を是正するために19都道府県の97選挙区の区割りを見直す。法律は1か月の周知期間を経て来月16日に施行され、それ以降に公示される衆議院選挙から新たな区割りが適用されることになる。

日銀、金融緩和策の維持を決定

日銀は金融政策決定会合で、2%の物価上昇率目標に向けて、短期金利と長期金利に誘導目標を設けている今の大規模な金融緩和策を維持することを決めた。

今週の見通し

国会は閉会となり、野党が政府・与党を直接追及する機会がなくなります。野党側は国会の閉会中でも「加計学園」の問題をめぐって審議を行うことを求めていますが、与党は応じないものとみられます。
国内政治の次の大きな関心は、6月23日に告示される東京都議会議員選挙に移ります。
小池知事が高い支持率を維持する中、自らを支える勢力を都議会の議席数としてどこまで獲得することができるかが焦点です。国政では自民党と連立与党を組む公明党が都政では小池知事側にポジションを取っており、国政との「ねじれ」現象も相まって行方が注目されます。