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7月10日に投開票された参院選の結果、憲法改正に前向きな、自民党・公明党・おおさか維新の会・日本のこころを大切にする党の「改憲勢力」が参院の議席数の3分の2を超えました。衆院では自民・公明の与党で3分の2の議席があり、憲法改正を提案(発議)することが可能な状況となりました。
この状況対する主要5新聞の社説は以下の通りで、憲法改正に消極的な朝日・毎日、積極的な読売・産経、そしてその中間の日経というスタンスに応じて主張も異なっています。

朝日新聞の主張

今回の参院選によって憲法改正への国民の賛同が得られたわけではないと指摘しています。

「どの条項から改正すべきか議論が収斂(しゅうれん)していない」と首相がいうのも、改憲に差し迫った必要性がないことの証左だ。この選挙結果で、憲法改正に国民からゴーサインが出たとは決していえない(20160711社説)

毎日新聞の主張

自民党の憲法改正草案は「民主主義の流れに逆行する」と指摘し、廃棄すべきと訴えています。

審査会の再開にあたっては条件がある。自民党が野党時代の12年にまとめた憲法改正草案を、まず破棄することだ。自民党草案は、前文で日本の伝統を過度に賛美し、天皇の国家元首化や、自衛隊の「国防軍」化、非常時の国家緊急権などを盛り込んでいる。さらに国民の権利を「公益及び公の秩序」の名の下に制限しようとする意図に貫かれている。明らかに近代民主主義の流れに逆行する(20160711社説)

日経新聞の主張

自民党の憲法改正草案の見直しを求めたうえで、憲法改正よりも経済再生に集中すべきと訴えています。

そもそも自民党は改憲が党是で、草案までまとめているが、2次草案は野党当時のものとはいえ、保守色が濃すぎてとても多くがのめる代物ではない。見直しの党内論議を求めたい。(中略)大災害への備えとしての緊急事態条項や、今回の参院選で地元の反発が相次いでいる選挙区の合区を回避するための改正など、ただちに議論の対象となるテーマがあるのは間違いない。改憲の議論を進めていくのが必要なのはもちろんだが、改憲を最優先の政治課題として取り組むかどうかには疑問がある。安倍晋三首相自身が認めているようにアベノミクスは「道半ば」である。ここはまず経済再生に政権の力を集中し改憲は議論段階として取り組んでいくのが適当だ(20160711社説)

読売新聞の主張

民進党を含む幅広い合意を得るのが現実的だと指摘。参院に都道府県代表を導入すること、災害時の国会議員任期延長などを提言しています。

憲法改正には、国会の発議後、国民投票で過半数の賛成を得ねばならない。このハードルを考えれば、野党第1党の民進党も含め、幅広い合意が可能な項目の改正を追求するのが現実的だ。まずは衆参の憲法審査会で、改正テーマの絞り込みの議論を冷静に深めることが重要である(20160711社説)

参院選の「合区」には地方の反発が強い。各都道府県から最低1人を選出する制度の導入は検討に値しよう。国政選が実施できないほどの大規模災害時に国会議員の任期を暫定的に延長する案も、積極的に論議してはどうか(20160712社説)

産経新聞の主張

改憲に全力を挙げるべき、その「一丁目一番地」は9条の改正だと訴えています。

憲法改正に賛成する勢力も3分の2を超えた。改憲や安全保障体制の強化などに総力を挙げるべきである(20160711社説)

憲法改正の論点は、大規模災害に備える緊急事態条項の創設、環境権など新しい権利、おおさか維新が主張する教育無償化など多岐にわたる。だが、「一丁目一番地」となるのは、言うまでもなく9条である。(中略)憲法が抱える最大の問題点を、首相や自民党は今こそ堂々と訴えるべきである。公明党は9条改正が不要だという。政党として憲法観が異なれば、安全保障政策の展開にも大きく影響する。自公両党は、9条をめぐる調整をこれ以上先送りすることは許されない(20160712社説)

焦点は憲法審査会

安倍首相も公明党の山口代表も、衆院・参院の「憲法審査会」において議論をし、野党も含めた幅広い合意を模索すべきという認識で一致しています。今後は、この憲法審査会でどのように議論が進んでいくかが焦点となります。