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参院選挙の勝敗を左右する「1人区」って?

参議院選挙は「選挙区」と「比例区」で構成されます。都道府県を単位とする「選挙区」では、今回の参院選では「1票の格差是正」のために史上初めて「合区」が導入され、「鳥取・島根」と「高知・徳島」は2つの県を合わせて1つの選挙区となっており、全国に45の選挙区があります。
「選挙区」は人口に応じて定数が決められており、最も多い東京選挙区は定数6となっています。この東京を含め、定数が2以上の「複数区」では、与党も野党も1議席以上を確保するため、与野党の獲得議席数にあまり差がつきません。一方で、全国に32ある定数1の「1人区(いちにんく)」は、与党と野党がたった1つの議席を争う激戦となります。この「1人区」の勝敗が選挙結果の勝敗を大きく左右するのです。

全ての1人区で「野党統一候補」を擁立

「野党統一候補」とは、1強・自民党に対抗するための野党の選挙協力です。全国に32ある「1人区」すべてで、野党4党(民進党・共産党・社民党・生活の党と山本太郎と仲間たち)が候補者を一本化しました。
なぜ候補者を一本化したのでしょうか。従来のように野党がそれぞれ候補者を立てると、政権に対する批判票が各党の候補者に分散してしまい、自民党候補を利することになってしまいます。政権に批判的な票を「野党統一候補」に結集させれば、自民党の候補に勝つチャンスが生まれる、というのが狙いです。

野党統一候補の政策協定と「野合」批判

統一候補を打ち立てている野党4党は、以下のような共通政策を掲げています。

  • 安全保障関連法の廃止と立憲主義の回復
  • 沖縄の民意を無視した辺野古新基地建設の中止
  • 憲法改正へ動くことを何としても阻止
  • 原発に依存しない社会の実現に向けた地域分散型エネルギーの推進

これに対して自民・公明の与党側は、野党統一候補を「選挙で勝つ事だけを目的とした野合」だと批判しています。政策や理念が大きく異なるにもかかわらず、選挙に勝つために協力するのは無責任だと批判しているのです。

野党統一候補は「野合」か?「政治の知恵」か?

野党統一候補を自民・公明の与党などは「野合」と批判し、野党側は「政治の知恵」などとその意義を強調します。当事者の賛否が分かれるのは当然として、主要新聞はどう評価しているのでしょうか。主要5新聞の主張は以下の通りです。

朝日新聞「画期的」と評価

各党は日米安保や原発再稼働など基本的な政策が違い、これまで互いに議席を争ってきた。そんないきさつを乗り越えて共闘するのは画期的である(中略)提案する。野党は比例区でも共闘してはどうか(20160530社説)

毎日新聞「理解できる」が「懸念もある」

現状で野党がバラバラに戦えば1人区で苦戦を強いられ「自民1強」の維持に結果的に手を貸す可能性がある。候補統一は戦術としては理解できる(中略)一方で懸念もある(中略)共闘頼みとなるあまり、政策の軸足が揺れ動くようでは問題だ(20160530社説)

日経新聞「政策の軸がかすむようでは困る」

野党として「政府の対応は問題点が多い」と反対論を展開するのはたやすい。しかし民進党は政権を経験した幹部が多い野党第1党として、建設的な対案を示す責任がある。共産党などとの選挙協力を優先して基本政策の軸がかすむようでは困る(20160622社説)

読売新聞「無責任」という批判は理解できる

4党は、安全保障関連法の廃止などを共通政策にしているというが、憲法、日米安保など基本政策の違いは大きく、中長期的な協力関係も曖昧だ。首相が「無責任だ」と批判するのは理解できる(20160621社説)

産経新聞 野党4党の主張は「現実性を欠いている」

安保関連法廃止を唱える野党4党の主張は、日本を取り巻く安保環境を的確に認識せず、日米同盟の抑止力を強化する具体策を語らない点で、現実性を欠いている(20160628社説)

このように、画期的だと評価する朝日新聞から、批判的な日経・読売・産経、その間の毎日と、評価が分かれています。安倍政権に批判的な朝日は野党統一候補を評価し、安倍政権を肯定的に捉えている読売・産経などは野党統一候補を評価しない、という構図となっているのです。