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加計学園、理事長と首相の面会「県と市に誤った情報を与えた」

2018年5月26日、加計学園は、愛媛県の内部文書に2015年2月25日に加計理事長と安倍首相が面会したと記載されていることをめぐり、「当時の担当者が実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出し、県と今治市に誤った情報を与えてしまったように思うとのことだった」などとするコメントを発表しました。つまり、実際には理事長と安倍首相が面会していないにも関わらず、愛媛県と今治市に対して虚偽の説明をしていた、という説明です。
2018年5月28日、衆・参両院の予算委員会で安倍首相は、愛媛県の内部文書について「私と加計氏が面会したとされている場に愛媛県がいたわけではなく伝聞の伝聞だ」などと述べた上で、改めてこの日の面会を否定しました。
野党側は、真相解明のために加計理事長や安倍昭恵首相夫人などの証人喚問などを引き続き求めています。これに対し与党側は、この問題に幕引きを図りたい考えです。

これまでの経緯

「加計学園」が愛媛県今治市に獣医学部を設置する事業者に決定

獣医学部の新設を目指す愛媛県と今治市は、2007〜2014年にかけて15回にわたり、国の「構造改革特区」制度に申請してきましたが、却下され続けてきました。
安倍首相は2014年9月、国家戦略特区の諮問会議で、獣医学部新設の解禁を含む規制改革について「早急に検討」と発言します。2015年6月30日には経済成長戦略「日本再興戦略」が閣議決定され、獣医学部の新設を検討することが明記されました。
そして2017年1月、国家戦略特区に指定された今治市は獣医学部の事業者を公募し、唯一応募した「加計学園」が事業者に決まりました。「加計学園」は、安部首相の友人が理事長を務めています。

文部科学省の前事務次官「行政がゆがめられた」

2017年5月17日、朝日新聞は、加計学園の獣医学部設置について「総理の意向」など記された文部科学省の内部文書を報じます。しかし、菅官房長官は記者会見で「怪文書のような文書だ」と否定。この文書を調査した文科省も「該当する文書は確認できなかった」と存在を否定しました。
これに対し、2017年5月25日、文部科学省の前の事務次官だった前川喜平氏が記者会見を開き、この文書は「確実に存在していた。あったものをなかったことにできない」などと述べ、文科省で作成された文書であると証言しました。また、加計学園の獣医学部新設について「極めて薄弱な根拠で規制緩和が行われた。公平・公正であるべき行政の在り方がゆがめられた」と主張しました。
事務次官の経験者が公然と批判したことで、この問題が一気に注目されることになりました。

文科省、文書を発見し謝罪

2017年6月15日、松野文部科学大臣は追加調査の結果を発表しました。
松野大臣は、民進党などが示していた19の資料のうち14の存在が確認できたとして「前回確認できなかった文書の存在が明らかになったことは大変申し訳なく、この結果を真摯に受け止めている」と謝罪しました。
その一方で、「官邸の最高レベルが言っている」と記した文書については、「担当の文科省職員は『こうした趣旨の発言はあったと思うが真意は分からない』と話している」と説明しました。また、行政がゆがめられたかについては、「プロセスや行政の過程がねじ曲げられたとは考えていない」と改めて否定しました。

加計学園めぐる閉会中審査、議論は平行線

2017年7月10日、この問題をめぐり、国会閉会中に審議を行う「閉会中審査」が衆参両院で開かれました。
参考人として出席した前川氏は、「総理大臣官邸の関与があることは明らかに推測される」「私が『ゆがめられた』と思う部分は、規制緩和の結果として加計学園だけに獣医学部の新設が認められたプロセスであり、不公平・不透明な部分があるのではないか」などと主張しました。
これに対して山本地方創生担当大臣は、「一点の曇りもなく、ルールに基づいてやってきた」「個別の案件について官邸などが入る余地はない」などと反論しました。
また、前の愛媛県知事の加戸守行氏は「岩盤規制にドリルで穴をあけてもらい、ゆがめられた行政がただされたというのが正しい」などと、正当性を訴えました。

7月24日に開かれた予算委員会では、安倍首相は、加計理事長から獣医学部新設の話を聞いたことはないと述べ、便宜を図ったことはないと強調しました。
安倍首相はまた、加計学園が獣医学部の新設を申請していることを知ったのは2017年1月20日の国家戦略特区諮問会議でのことだと説明しました。
結局、議論は平行線に終わりました。

加計学園が運営する獣医学部が開学

2017年11月10日、文部科学省の大学設置審議会は、来年4月の開学を認める結論をまとめ、林文部科学大臣に答申しました。野党は一連の疑惑を背景に認可の留保を求めましたが、11月14日、林文科大臣は獣医学部の新設を認可すると発表します。
そして2018年4月、「加計学園」が運営する岡山理科大学の獣医学部が今治市に開学しました。

加計学園めぐるメール、文科省で発見。柳瀬氏との面会予定を記載

2018年4月20日、林文科大臣は、学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、2015年4月2日に内閣府から文部科学省あてに送信されたメールが文科省内で見つかったことを明らかにしました。
メールには、愛媛県・今治市・加計学園の関係者が、内閣府の地方創生推進室次長だった経済産業省の藤原審議官と面会した際の様子が記されているほか、「本日15時から柳瀬総理大臣秘書官とも面会するようです」などと記載されています。
愛媛県職員らとの面会について、柳瀬氏は「記憶の限りお会いしたことがない」と否定してきましたが、面会があった可能性が高まりました。

柳瀬元首相秘書官、学園関係者との面会を認める

2018年5月10日、衆参両院の予算委員会に柳瀬元首相秘書官が参考人として出席し、質疑が行われました。柳瀬氏は、2015年4月を含む3回、首相官邸で加計学園の関係者と面会したことを明らかにし、この場に面会の場に愛媛県職員らが同席していた可能性を認めました。
これまで愛媛県職員との面会を否定してきた理由については、「10人近くが来て、そこにいたかどうか分からなかったので、国会では『今治市の方が来たかどうかは記憶にない』と答弁していた」などと説明しました。また、この件を安倍首相に報告したり、安倍首相から指示を受けたりしたことはないと述べ、加計学園に対する特別扱いは否定しました。
一方で、愛媛県が作成した文書に柳瀬氏が「首相案件」と発言したと記されていることについては、「安倍総理大臣が『獣医学部新設を早急に検討している』と述べていることは紹介したが、今治市の個別案件が首相案件とは言っていない」「私はふだん『首相』という言葉は使わない。文書に記載された内容には違和感がある」などと述べました。

愛媛県の内部文書「2015年2月に加計理事長と安倍首相が面談」

2018年5月21日、愛媛県の中村知事は加計学園の獣医学部設置をめぐり新たに見つかった内部文書を国会に提出しました。
この中で、2015年3月に愛媛県と加計学園側との打ち合わせ内容をまとめた文書では、加計学園側から愛媛県への当時の報告内容として、「平成27年2月25日、理事長が首相と15分程度面談。理事長から獣医師養成系大学空白地帯の今治市に設置予定の獣医学部では、国際水準の獣医学教育を目指すことなどを説明。首相からは『そういう新しい獣医大学の考えはいいね』とのコメントあり」などと記載されています。
安倍首相はこれまで、加計学園の獣医学部新設の計画について始めて知ったのは、加計学園が国家戦略特区の事業者に選定された2017年1月20日だと説明してきました。今回の愛媛県の内部文書の記載が事実ならば、安倍首相は加計理事長から2015年2月に獣医学部新設計画について説明を受けていたことになり、矛盾します。
これに対し加計学園は、「理事長が2015年2月に総理とお会いしたことはございません」などとするコメントを出し、文書の記述内容を否定しました。
安倍首相も翌22日に記者団に対し、「ご指摘の日に加計氏と会ったことはない。念のため記録を調べたが確認できなかった。今まで国会などで話した通り、獣医学部について加計さんから話を聞いたこともないし、私から話したこともない」と述べ、文書の記載内容を否定しました。

賛否両論:2015年2月25日の加計理事長と安倍首相の面会

「面会はあった」派の主張

  • 愛媛県の内部文書に面会が記載されている
  • 面会がなかったとすると、文書の他の記載ともつじつまが合わない
  • 「首相動静」にのらずに首相と面会することはできる
  • 安倍首相をはじめ関係者は嘘をついている

「面会はなかった」派の主な主張

  • 愛媛県の文書は伝聞で信ぴょう性が低い
  • 加計学園の担当者が愛媛県と今治市に誤った情報を与えた
  • 当日の「首相動静」に加計理事長の訪問は載っていない
  • 安倍首相も加計理事長も面会を否定している

新聞各社の主張(加計理事長の国会招致への賛否)

朝日新聞(2018年5月23日社説賛成

面会の当事者とされる加計氏、そして、官邸と学園側の接点となった柳瀬唯夫元首相秘書官の証人喚問を早期に実施しなければならない

毎日新聞(2018年5月29日社説賛成

加計氏が国会など公の場で真相を語らなければ、疑惑はいつまでも続くことになる

日経新聞(2018年5月29日社説賛成

疑惑の解明には、加計問題で加計氏や愛媛県の中村時広知事、森友問題で昭恵夫人や谷氏らを国会招致して経緯を聞く必要がある

読売新聞(2018年5月24日社説中立

野党は関係者の国会招致を求めているが、与党は慎重だ

産経新聞(2018年5月23日社説賛成

加計氏の国会招致に加え、獣医学部誘致の実務に当たった加計学園や県、今治市の職員から話を聞くのが順当だろう

社説読み比べ

読売を除く4紙は加計理事長の国会招致に賛成

野党が求めている加計理事長の国会招致について、読売新聞を除く4紙はそろって賛成していますが、読売は「野党が求めているが与党は慎重だ」と記すだけで賛否を明らかにしていません。
また、読売新聞はこの問題については野党にも責任があると主張。

真相を究明するとして論議を重ねたが、堂々巡りに陥っている。明確な根拠も示さず、疑惑をあげつらう野党と、粗い対応で混乱を招いた安倍首相の双方に責任があろう(5月29日読売社説)

北朝鮮をめぐる国際情勢が日々動いていると指摘した上で、

日本の国益をいかに確保するか。与野党には、意義のある論戦を展開することが求められる(5月29日読売社説)

などとして、この問題をめぐる議論の幕引きを訴えています。

朝日・毎日「首相が加計学園に怒らないのはおかしい」

愛媛県の内部文書に記載されている2015年2月25日の加計理事長と安倍首相の面会について、加計学園が「実際には面会はなかったが愛媛県などに虚偽の情報を伝えていた」という趣旨の説明をしたことをめぐって、朝日と毎日は、安倍首相が加計学園に対して怒らないのはおかしいと指摘しています。

理解できないのは、面会はつくり話で、愛媛県にウソをついていたという学園のコメントに対し、「論評する立場にない」としたことだ(略)学園の関係者が、ありもしない面会や自分の発言を捏造していたというのなら、怒り、抗議するのが当然だろう(5月29日朝日社説)

不可解なのは首相が抗議しないことだ(略)まさに首相との関係を利用して獣医学部新設を実現しようとした行為ではないか。首相は本来ならもっと学園の対応に怒ってしかるべきだろう。きのうの集中審議で野党はその点を突いたが、首相は「私は常に平然としている」などとはぐらかした(5月29日毎日社説)

日経・産経「特別委員会を設置せよ」

日経と産経は、他の重要法案の審議への影響を避けるため、加計学園や森友学園などをめぐる不祥事については、特別委員会を設けて議論すべきだと主張しています。

国民民主党や日本維新の会は28日の質疑で、森友、加計両学園や自衛隊の日報問題などを調査する特別委員会の設置を提案した。今国会は不祥事の追及に時間がとられ、働き方改革など重要法案の審議が遅れている。真相を究明し、再発防止策を話し合う特別委の設置は有効な手段だろう(5月29日日経社説)

県文書をめぐる解明と国政の重要課題は並行して進めなければならない。その点で、日本維新の会が唱える特別委員会の新設は検討に値する(5月23日産経社説)

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