森友学園に対する国有地売却をめぐり、財務省が決裁文書を改ざんしたり交渉記録を廃棄した問題について、財務省は調査報告書を公表した。
https://www.mof.go.jp/public_relations/statement/other/20180604chousahoukoku.pdf
報告書では一連の問題行為について、「財務大臣及び事務次官等に一切報告されぬまま、本省理財局において、国有財産行政の責任者であった理財局長が方向性を決定づけたものであり、その下で、総務課長が関係者に方針を伝達するなど中核的役割を担い、国有財産企画課長及び国有財産審理室長が深く関与していたものである」と結論付けた。動機については、「国会審議において森友学園案件が大きく取り上げられる中で、更なる質問につながり得る材料を極力少なくすることが、主たる目的であった」と認定した。
その上で、改ざんが行われた当時に財務省理財局長だった佐川氏について、「応接録の廃棄や決裁文書の改ざんの方向性を決定付けた」「問題行為の全般について責任を免れるものではない」として、停職3か月の懲戒処分に相当するとし、退職金から513万円を減額することとした。
また、佐川氏の部下だった中村総務課長について、一連の問題行為について「中核的な役割を担っていた」として、停職1か月の懲戒処分とした。この他、近畿財務局長や当時の事務次官などを含め、総勢20人が処分の対象となった。
麻生財務大臣は記者会見で、「行政文書を改ざんし国会に提出することはあってはならないことで、はなはだ遺憾だ。交渉記録について極めて不適切な取り扱いがなされ、改めて深くおわびを申し上げる」などと謝罪した上で、閣僚給与1年分170万円を自主的に返納することを明らかにした。
一方で、「財務省として今回の事態を真摯に反省し二度とこうしたことが起こらないよう再発防止策を直ちに進める」「私のリーダーシップのもと職員一同が一致団結し信頼回復に努めていく」などと述べ、引責辞任を否定した。
また、安倍首相は記者団に対し、「麻生大臣には先頭に立って責任を全うしてほしい」と述べ、麻生大臣を続投させる考えを改めて示した。記者団が「政治責任はどこにあるのか」と質問したのに対しては、「政治責任とは、こうしたことが二度と起こらないよう対策を徹底して講じていくことだろう」と述べた。
これに対し野党側は、麻生大臣の引責辞任や、佐川氏の証人喚問などを求める方針。
報告書で認定された主なポイントは以下の通り。
*政治家関係者との応接録が廃棄された経緯について
2017年2月17日に安倍首相が「私や妻が関係していたら総理大臣も国会議員も辞める」と国会で答弁した後、安倍昭恵首相夫人の名前が入った書類などの確認が始まった。
その後、総務課長は安倍昭恵首相夫人やその他の政治家の関係者からの問い合わせについてリストを作成させ、佐川氏に報告した。
これに対して佐川氏は、交渉記録の保存は1年未満という「文書管理のルールに従って行われるものだ」という考えを示した。
総務課長はこれを「政治家関係者との応接録を廃棄するよう指示された」と受け止め、近畿財務局などにこうした方針を伝え、記録の廃棄が進められた。
*森友学園側との応接録が廃棄された経緯について
森友学園との交渉記録をめぐって、佐川氏は2017年2月24日に国会で、「交渉記録はなく面会などの記録も残っていない」という趣旨の答弁をしたが、総務課長などは、この時点では実際には記録が残っていることを認識していた。
佐川氏は、実際に記録が残っているかどうかを確認せずに、保存期間を1年未満とする文書管理のルールどおりに廃棄されているはずだと認識して答弁していた。
その上で、佐川氏は総務課長に対し、答弁を踏まえて文書管理を徹底するよう念押しした。総務課長はこれを「残っている応接録があれば廃棄するよう指示された」と受け止め、近畿財務局などにこうした方針を伝え、記録の廃棄が進められた。
*決裁文書が改ざんされた経緯
2017年2月、総務課長らは佐川氏に、財務省理財局が作成した「特例承認」という決裁文書の中に、政治家関係者からの問い合わせに関する記載があることを報告した。
これに対して佐川氏は、「そうした記載のある文書を外に出すべきではなく、最低限の記載とすべきである」と応じた。
佐川氏からそれ以上具体的な指示はなかったものの、総務課長らは文書の「記載を直す必要がある」と認識し、この認識のもとで2017年2月26日に理財局の職員が、政治家関係者からの問い合わせ状況などが記載された経緯の部分を削除する改ざんを始めた。
また同じ日に、財務省理財局は近畿財務局の職員に出勤を要請し、近畿財務局が作成した「特例申請」について同じように改ざんするよう具体的に指示し、指示どおりに近畿財務局で改ざんが行われた。
翌日の2017年2月27日に、佐川氏は、別の「売払決議」という決裁文書の内容について報告を受けた際に、「このままでは外に出せない」と応じた。これによって部下の間では、記載を改ざんすることになるとの認識が改めて共有された。
また佐川氏はこの際に総務課長らに対し、「担当者に任せるのではなくしっかりと見るように」と指示をした。総務課長らは、記載内容を改ざんしたうえで佐川氏の了解を得ることが必要になると認識した。
2017年3月20日に行われた理財局での議論では、佐川氏は「2月から3月にかけて積み重ねてきた国会答弁を踏まえた内容とするように」念押しがあった。報告書は、「遅くともこの時点までには、理財局長も、決裁文書の書き換えを行なっていることを認識していたものと認められる」と指摘している。
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