政府が閣議で決定した働き方改革関連法案は、労働基準法や労働契約法など合わせて8本の法律の改正案で構成されている。労働基準法の大きな改正は70年ぶり。以下の3つが主なポイント。
なお、政府は当初「裁量労働制の適用業務の拡大」も盛り込む方針だったが、厚生労働省が2013年に行った労働時間の調査に誤りが相次いで見つかった問題を受けて、法案から削除された。
①時間外労働の上限規制
長時間労働を是正するため、時間外労働の上限を、原則月45時間、年間360時間とする。特別な事情がある場合は、年間6か月まではさらなる時間外労働を認めるが、最大でも年間720時間以内で、月100時間未満とする。
規制に違反した企業への罰則(6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金)も盛り込まれた。大企業は2019年4月1日、中小企業は2020年4月1日の施行を目指す。

ただし、以下の例外も設けられた。
トラック・バスなど自動車運転の業務については、施行後5年間、適用を猶予する。その後、時間外労働の上限を年間960時間に規制し、将来的には他の業種と同じ規制を適用するよう検討を行う。
建設業も5年間、適用を猶予した後、他の業種と同じ規制を適用する。
医師は、業務の特殊性から規制のあり方を今後検討し、施行から5年後に上限規制を導入する。

②高度プロフェッショナル制度
働いた時間ではなく成果で評価する趣旨で、高収入の一部専門職を労働時間の規制から外す。一方で、労働者の健康確保のため、年間104日以上、4週間で4日以上の休日を確保することなどが義務づけられる。
対象になるのは、年収1075万円以上の証券アナリストや医薬品開発の研究者、経営コンサルタントなどが想定されている。正式には、年収要件や対象職種は、法案の成立後、労使双方が参加する国の労働政策審議会で議論し、厚生労働省が省令で定める。2019年4月1日の施行を目指す。
この制度では、残業や休日出勤をしても割増賃金が支払われないため野党などは「残業代ゼロ法案」などと批判している。

③同一労働同一賃金
同じ内容の仕事に対しては同じ水準の賃金を支払うという考え方。
企業に対し、正社員と非正規労働者の不合理な待遇の差を禁止し、待遇差が出る場合は理由を非正規労働者に説明することを義務づける。
また、すべての企業に対し、労働者の健康を確保するため労働時間を客観的に把握することを義務づける。
大企業は2020年4月1日、中小企業は2021年4月1日の施行を目指す。