安倍総裁の辞意表明を受けて行われた自民党の総裁選は9月14日(月)に投開票され、菅官房長官が勝利し、新たな総裁となりました。
安倍政権の「継承」を訴えた菅氏が、安倍政権の負の側面を批判した石破氏・岸田氏に対して、国会議員票でも地方票でも圧倒した結果となったニャ。
自民党内の7つの派閥のうち5つが早々に菅氏支持を表明したことで、最初から結果は見えていたニャ。
7年8ヶ月にわたる長期政権だった安倍政権が終わり、次の首相となる菅総裁が誕生するにあたって、新聞5紙が翌日(9月15日)の社説でどんなことを論じたのか、見ていきましょう。
安倍政権の「負の側面」の典型例である「森友学園」「加計学園」「桜を見る会」の3点セットについて、朝日新聞と毎日新聞は批判しているニャ!
朝日新聞は疑惑3点セットに言及した上で、

菅氏はきのう「国民から信頼される政府をつくっていきたい」と語ったが、負の遺産にフタをしたまま、それができると考えているのだろうか

と批判しています。当然です!!

同感だわ。これらの疑惑について毎日新聞も、

菅氏は解決済みとの姿勢を示し続けた。疑惑に向き合う姿勢を欠いたままでは国民の信頼は取り戻せない

と指摘しているわよ。

一方で、日経・読売・産経の3紙は翌日朝刊の社説ではこれらの問題に触れていないニャ。読売と産経は、憲法改正への取り組みを求めているニャ。
憲法改正は、安倍政権が実現できなかった大事な課題じゃからのう。読売が書いておる通り、

菅氏は公明党や野党との接点を探るべき

ということじゃよ!

その通りやで。産経新聞も、

党総裁の菅氏にはその先頭に立ってほしい

とハッパをかけてるで。ほんま頑張ってほしいわ!

日経新聞が強調しているのは、やはりコロナ対策だヨ。

新型コロナウイルス対策を強力に進め、経済との両立をはかっていくためにも、挙党体制づくりが何よりも大切である

と訴えているネ。

歴史的な節目にあたり、各紙のスタンスの違いが社説に色濃く表れていますね。
特に、安倍政権の疑惑3点セットについて、今回の自民党総裁選挙の期間中に各紙が社説でどう取り上げていたのか、検証してみましょう。

疑惑3点セットを社説に掲載した回数

安倍総理が辞意を表明した8月28日から、総裁選が終了した9月14日の翌日の朝刊までの間に、主要5新聞が「森友学園」「加計学園」「桜を見る会」というキーワードについて、社説で掲載した回数は、以下の通りです

朝日新聞と毎日新聞がそれぞれ4〜5回取り上げ、批判的に論じているのが目立ちます。
例えば朝日新聞は9月4日の朝刊に「森友・加計・桜 説明なき退陣ありえぬ」というタイトルの社説を掲載するなど、疑惑に対する説明を強く求めています。

これに対して、読売新聞はこれらの疑惑について、8月28日〜9月15日の間で一度も社説で論じていません。

産経新聞も、「モリ・カケ」という表現が社説の中に出てきますが、

政権後期には「モリ・カケ」問題などを追及されたが、総じて安定した国政運営だった(8月29日朝刊社説より)

石破氏は「納得と共感。」をスローガンにした。「モリ・カケ」問題などへの安倍政権の姿勢に批判的だが、政府・自民党がさらにどのような対応をとるべきかを具体的に説いたらどうか(9月9日朝刊社説より)

といった言及の仕方で、批判的な文脈ではありません。

では、朝日・毎日vs読売・産経という構図の「外」にある日経新聞は、どう論じているでしょうか。
上記の期間中に社説で言及した3回は、以下のような文脈です。

森友・加計問題に象徴されるように、何かと身びいきする政権との印象を与えたことは否定できない(8月29日朝刊社説より)

首相夫人が訪れた森友学園への国有地の払い下げ、首相の友人が経営する加計学園の学部新設などは、えこひいきがあったのではないかとの疑念を生んだ。明らかに法に触れる行為があったわけではないが、李下(りか)に冠を正す振る舞いではあった(9月5日朝刊社説より)

(石破氏、岸田氏は)森友、加計両学園の問題などを再調査する可能性に含みをもたせた(9月13日朝刊社説より)

明らかな違法行為があったわけではないものの、「身びいきする印象を与えた」という評価です。

報道機関としての大切な役割の1つが「権力の監視」です。そういう意味では、安倍政権のもとで噴出した様々な疑惑について批判・検証を求めるのは大切なことです。
と同時に、「あるべき社会像について提言する」ことも、意義ある言論です。従って、憲法改正を主張することも、もちろん否定されるものではありません。
それぞれのメディアに「正義」がある中で、限られた紙面で何を指摘し、何を訴えているのか。今後も分析していきます。