もくじ

賛否両論

自衛隊の「イージス・アショア」導入をめぐる賛否それぞれの立場からの主な主張は以下の通りです。

主な反対意見

  • 北朝鮮のミサイル発射の脅威は遠のいた
  • イージス艦による対応で十分ではないか
  • 巨額の費用に見合う効果があるか疑問
  • アメリカの武器購入が目的ではないのか

主な賛成意見

  • 北朝鮮のミサイルの脅威は変わらない
  • 24時間365日の防衛体制が整う意義は大きい
  • イージス艦と比べて突出して高額ではない
  • あくまで日本の防衛力強化に必要
日本政府は、イージス艦のミサイル防衛システムを陸上に置く「イージス・アショア」を導入し、秋田県と山口県に1基ずつ配備する方針だニャ。
こちらの用語解説記事も参照してほしいニャ!

  • 【ニュース用語解説】「イージス・アショア」ってなに?
  • 北朝鮮は以前のように日本近海にミサイルを撃ってくることはなくなりました。
    イージス・アショア導入の必要性は薄れたんじゃないでしょうか。
    北朝鮮が、日本を射程におさめる数百発のミサイルを実践配備している状況は変わらず、脅威はなくなっておらんのじゃ。
    1基あたり800億円が目安だと説明していたのに、1340億円に跳ね上がったことも批判されているわ。
    最新鋭のレーダーを導入するためやな。
    せやけど、イージス艦と比べても、イージス・アショアの金額が突出しているわけではないで。
    北朝鮮の弾道ミサイルだけではなくて、軍事大国化する中国のミサイルへの対抗も念頭にあるみたいだネ。
    ロシアも日本のイージス・アショア配備に反発しているヨ。
    日本政府は「純粋に防御的なシステム」と説明しておるが、敵を攻撃するミサイルを発射させる能力を付け加えることも可能ではあるのう。
    この「イージス・アショア」導入について、新聞5紙の賛否は以下の通りです。

    主要5紙のスタンス

    朝日新聞やや反対

    朝日新聞は2018年12月19日の社説『安保法後の防衛大綱 軍事への傾斜、一線越えた』の中で、

    北朝鮮のミサイル危機のさなかに決めた陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の導入を追認したのは、中国のミサイルに対抗する狙いがあるためだ。
    だが、巨額の投資に見合う効果があるのかは疑わしい。政府は導入を再考すべきだ

    と主張しています。反対を明言はしていないので「やや反対」という立場です。
    また、2018年12月23日の社説『防衛費の拡大 米兵器購入の重いツケ』の中では、

    巨額の費用に見合う効果があるのか、大きな疑問符がつく。それでも安倍政権が導入に突き進むのは、トランプ米大統領が掲げる「バイ・アメリカン(米国製品を買おう)」に呼応してのことだろう

    軍拡競争や地域の不安定化につながりかねない兵器の大量購入で、トランプ氏の歓心を買うような振る舞いは、およそ見識を欠く

    と批判しています。

    毎日新聞やや反対

    毎日新聞は2018年8月7日の社説『陸上イージスの導入経費 青天井で膨れ上がる危険』の中で、

    イージス・アショアの価格が想定よりも高騰していることを指摘した上で、 防衛省は価格高騰の要因としてレーダーの高性能化を挙げた。だが、日本全土を2基でカバーするため現行システムの倍以上の探知能力が必要になるのは分かっていたことだ

    北朝鮮の脅威を理由に、性能や価格の詳細な検討は後回しにして導入方針を閣議決定した。拙速に過ぎたのではないか

    と批判しているわ。
    また、2018年9月3日の社説『膨張する防衛予算 大綱見直しに潜む危うさ』の中では、

    配備まで6年かかるとされる陸上イージスの導入を、大綱の見直し論議を待たずに決める必要があったのか。その背後に、武器の大量購入を迫るトランプ米大統領がちらつく

    と指摘したわ。イージス・アショア導入には「やや反対」といったところね。

    日経新聞やや賛成

    日経新聞は2018年8月27日の社説『持続的に防衛力を高めていくには 』の中で、

    米朝融和が進むとみて、導入の中止を主張する向きがある。どこからミサイルを撃ち込まれても対処できるシステムの構築は、憲法が認める「専守防衛」に沿うものである。安保環境の少々の変動で左右されるべきではない

    として、イージス・アショアの導入を進めるべき、という立場だヨ。
    その一方で、価格が当初の説明から高騰していることについては、

    予算が成立すると急に増額が必要になるのは公共事業にありがちな話だが、ここまでの値上がりは極めて異例だ。見積もりが甘かったのではないか。
    1隻あたり1700億円程度かかるイージス艦を増やすより陸上配備型の方が安上がり、というのがイージス・アショア導入のうたい文句だった。日本本土から遠くで迎撃するほど被害を小さくできるのだから、値段にさほど差がないならばイージス艦を買い増す選択肢もあり得た。
    本当に1340億円もかかるのか、再度の増額もあり得るのか、など、きちんとした説明なしに先に進むのは納得できない

    として、十分な説明を求めているヨ。総じて、イージス・アショア導入には「やや賛成」の立場だネ。

    読売新聞賛成

    読売新聞は2019年5月29日の社説『日米同盟 効率的な防衛力整備が必要だ』の中で、

    北朝鮮に限らず、中国やロシアも様々なミサイルを開発している。海自のイージス艦のミサイル監視能力には限界があろう。最新鋭のレーダーを搭載し、多数のミサイルの同時攻撃にも対処できる態勢を整えることは大切だ

    と指摘しておる。イージス・アショア導入にははっきり賛成の立場じゃ。
    価格が高騰していることについては、

    米政府を通じて、最新鋭の装備を購入する「対外有償軍事援助」は、米側が価格設定や納期を主導する仕組みのため、費用が高騰しがちである。その透明性を確保することが、防衛力の整備に対する国民の理解につながろう

    と指摘しておるが、価格の高騰を理由に導入に反対はしておらん。

    産経新聞賛成

    産経新聞は2018年8月2日の社説『陸上イージス 国民を守る上で不可欠だ』の中で、
    北朝鮮が核・ミサイルを放棄していないことを指摘した上で、

    陸上イージスの新型レーダーの探知距離は、海自イージス艦と比べ倍以上の千数百キロとなる。専守防衛の日本や同盟国米国にとって、北朝鮮や中露の動向を探る上で極めて有用だ
    現状の態勢の弱点を埋めるものでもある。海上自衛隊のイージス艦は乗組員の休養や訓練、艦船の整備のため港に帰らざるを得ず、切れ目のない防衛は難しい。航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)は拠点防空用で日本全域を守る装備ではない。
    北朝鮮だけではない。中露両国は核搭載可能な弾道ミサイル、巡航ミサイルを多数保有している。陸上イージスの能力を高めていき備えるのも当然といえる

    として、導入の意義を強調しておるで。
    価格の高騰については、イージス艦の運用費と比べても突出しているとはいえないと指摘した上で、

    決して安くはないが、国民の安全を重視する観点から、導入を急ぐべきである

    と主張しとるで。

    【朝刊比較】5紙の1面記事&社説一覧

    朝日新聞

    毎日新聞

    日経新聞

    読売新聞

    産経新聞

    ※お断り
    ここで紹介しているのは、東京都内で販売されている各新聞社の朝刊に基づいて、各社がウェブサイトに掲載している記事へのリンク集です。記事の見出しや本文は、朝刊と異なる場合があります。朝刊と同じ記事がウェブサイトに見つからない場合は朝刊の見出しを記載しています。
    なお、コラムやイベントの宣伝記事などは割愛しています。