学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、衆議院および参議院で予算委員会が開かれ、柳瀬元首相秘書官が参考人として招致され質疑が行われた。
柳瀬氏は、2015年4月を含む3回、首相官邸で加計学園の関係者と面会したことなどを認める一方で、この件を安倍首相に報告したり、安倍首相から指示を受けたりしたことはないと説明し、加計学園に対する特別扱いを否定した。
今回の質疑を受けて、与党側は、安倍首相の関与はなく、獣医学部新設のプロセスに不正はないとして、この問題の幕引きを図りたい考え。
これに対し野党側は、柳瀬氏が学園関係者と官邸で3回面会するなど「加計学園ありき」だった疑惑が深まったとして、柳瀬氏を「証人喚問」することや、加計学園の加計孝太郎理事長、愛媛県の中村知事など関係者の国会招致などを求め、今後も追及していく方針。
質疑における柳瀬氏の発言の主なポイントは以下の通り。

・2015年4月の学園関係者との面会を認める
2015年4月2日の愛媛県職員らとの面会について、柳瀬氏はこれまで国会答弁などで「記憶の限り会ったことはない」と説明してきた。
これについて柳瀬氏は、「4月ごろに加計学園関係者と面会した。面会の記録は残っていないが、その後の一連の報道や関係省庁による調査結果をみると、10人近くの随行者の中に愛媛県や今治市関係者たちがいたのかもしれない」と述べ、2015年4月に学園関係者と面会したことと、その場に愛媛県職員らが同席した可能性を認めた。

今まで学園関係者との面会を明らかにしなかったことについては、「質問があったことに一つ一つ答えた結果、全体像が見えなくなって混乱を招き、国会審議に迷惑をかけた」と釈明した。
また、これまで愛媛県職員との面会を否定してきた理由については、「１０人近くが来て、そこにいたかどうか分からなかったので、国会では『今治市の方が来たかどうかは記憶にない』と答弁していた」と述べ、安倍首相を守るためではないかとの指摘に対しては「全く違う」と否定した。

・面会は官邸で3回、安倍首相の別荘で1回
学園関係者と首相官邸で面会したのは、2015年4月のほか、同年の2〜3月ごろと、6月に今治市などが国家戦略特区に提案した前後の合わせて3回だと述べた。
また、これ以外にも2013年5月に山梨県にある安倍首相の別荘に秘書官として同行した際に、加計理事長や事務局の関係者と面会したことがあると説明した。

・「首相案件」発言は否定
愛媛県が作成した文書に、柳瀬氏が「首相案件だ」と発言したと記されていたことについて、柳瀬氏はこれまで「私が外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはありえません」と否定してきた。
これについて柳瀬氏は「安倍総理大臣が『獣医学部新設を早急に検討している』と述べていることは紹介したが、今治市の個別案件が首相案件とは言っていない」「私はふだん『首相』という言葉は使わない。文書に記載された内容には違和感がある」などと説明した。
・首相には面会の報告せず、特別扱いしたことはない
柳瀬氏は、「この件について、安倍総理大臣に報告したことも、指示を受けたこともない。加計理事長と友人関係だろうということは認識していたが、特別扱いをしたことはない」と述べた。
また、国家戦略特区に提案した事業者と面会したのは、加計学園の関係者だけだったものの、「個別の自治体や事業者について、各省に何か指示をしたり、お願いをしたりしたことはない」などと述べた。