憲法記念日にあたり、各党は声明などを発表し憲法改正に対する立場を表明した。
自民党は「自衛隊の明記」をはじめ4項目を憲法改正の具体的項目としてまとめていて、「憲法改正の議論をリードしていく決意だ」と訴えた。
自民党と連立政権を組む公明党は、「政党間で幅広い合意を得ながら、国民理解の成熟をともなっていくことが重要だ」と慎重な姿勢を示した。
野党の中で憲法改正に積極的な日本維新の会は、改正項目として「教育無償化」「統治機構改革」「憲法裁判所設置」を挙げ、「国民投票を実施し、真に国民の定めた憲法にする」と訴えた。

これに対して、他の野党6党は安倍政権の目指す憲法改正をけん制した。
立憲民主党は「憲法を改めようとするのであれば、憲法の規定が原因で政策遂行に支障が生じるのかや、規定がないことで不都合が生じるのかなど必要性について、具体的な事実に基づく検討が不可欠だ」と指摘。自民党の目指す自衛隊の明記など4項目は「必要性がない」との考えをにじませた。
希望の党は「安倍内閣は『改憲ありき』で拙速に改憲論議を進めようとしており、国民の理解は到底得られない。憲法の三原則をより担保する観点から丁寧に議論を行う」として、安倍政権の改憲への姿勢を「拙速」だと批判した。
民進党は「地方分権の推進、新しい人権の保障、解散権を含めた権力乱用の抑制など時代の要請に応じた未来志向の憲法を積極的に議論していく」として、安倍政権を念頭に「権力乱用の抑制」を憲法の課題に掲げた。
共産党は「憲法を壊してきた安倍政権に、憲法を変える資格も、語る資格もない。市民と野党の共闘で、安倍政権を総辞職に追い込み、安倍改憲の企てを打ち破る」などと全面対決の構え。
自由党は「この国の未来のため、立憲主義、民主主義の崩壊を止めるために、全力を尽くすことを国民に粘り強く訴えていきたい」などと訴えた。
社民党は「安倍政権の下で、憲法の理念や条文が踏みにじられてきた。憲法を活かし、憲法が保障する国民の権利や暮らし、平和を守る政治の実現にまい進する」と主張した。

こうした中、安倍首相は、東京都内で開催された憲法改正を目指す市民らによる会合にメッセージを寄せた。
安倍首相は、去年のこの会合に「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」というメッセージを寄せたことに触れ、「発言を1つの契機として、この1年間で憲法改正の議論は大いに活性化し具体化した。そのことを大変喜ばしく思っている」と述べた。
そのうえで、「わが国の安全を守るため命を賭して任務を遂行している者の存在を明文化することで、その正統性が明確化されることは明らかだ。わが国の安全の根幹に関わることであり、憲法改正の十分な理由になる」などと、自衛隊の存在を明記する憲法改正に改めて意欲を示した。

一方、憲法改正に反対する立場の団体が東京都内で開いた集会では、立憲民主党の枝野代表が「憲法をないがしろにするゆがんだ権力を1日も早くまっとうなものに変えていくため、多くの市民や他の政党と力を合わせ、先頭に立って頑張っていく」と述べるなど、野党5党の党首が安倍政権の目指す憲法改正に反対する考えで一致した。