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野党6党が国会審議を拒否
「森友学園」への国有地売却をめぐる財務省の文書改ざん問題、財務事務次官の女性記者へのセクハラ問題、「加計学園」の獣医学部新設をめぐり柳瀬元首相秘書官の説明と食い違うメールが見つかった問題など政府を追及する材料が相次ぐ中、立憲民主党や民進党など野党6党は麻生財務大臣の辞任や柳瀬元首相秘書官の証人喚問などを審議の前提として求めています。これに対し与党は野党側の要求に応じず、野党6党は国会審議を拒否し続けています。
これまでの経緯
財務省めぐる問題:「森友」文書改ざん問題、事務次官セクハラ問題
学校法人「森友学園」への国有地売却をめぐり、財務省の理財局が「売払決議書」や「貸付決議書」など14件の文書を書き換えていたことが明らかになりました。
また、財務省の事務方トップである福田事務次官がテレビ朝日の女性記者にセクハラ行為を行ったとされる問題をめぐり、福田次官は辞任しました。
こうした一連の問題について、野党側は麻生財務大臣の辞任を求めています。
「加計学園」めぐる問題
学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、2015年4月2日に内閣府から文部科学省あてに送信されたメールが文科省内で見つかりました(4月20日に公表)。
メールには、愛媛県・今治市・加計学園の関係者が、内閣府の地方創生推進室次長だった経済産業省の藤原審議官と面会した際の様子が記されているほか、「本日15時から柳瀬総理大臣秘書官とも面会するようです」などと記載されています。
愛媛県職員らとの面会について、柳瀬氏は「記憶の限りお会いしたことがない」と否定していますが、柳瀬氏が面会していた可能性が高まりました。
柳瀬氏は去年7月に国会に参考人として出席した際に「記憶にない」と否定した経緯もあり、野党は、今度は「参考人」としてではなく、虚偽の証言をすれば偽証罪に問われる「証人喚問」が必要だと主張しています。
賛否両論
野党の主な主張
- 麻生財務大臣は一連の問題の責任をとって辞任せよ
- 柳瀬元首相秘書官を「証人喚問」すべき
政府・与党のスタンス
- 財務省の立て直し・信頼回復のためにも麻生大臣は続投
- 柳瀬氏の国会招致は「参考人招致」が妥当
新聞各社の主張(抜粋)
朝日新聞(2018年4月24日社説)与党が悪い
野党の要求を真摯に受け止め、国会を正常化させる責務は、与党にこそある
毎日新聞(2018年4月26日社説)与党の方が悪い
一義的な責任は、安倍政権の不祥事が相次ぐ中でその真相究明に及び腰の与党にある(略)だからといって、麻生氏が辞任しないのを審議拒否の理由にする野党の対応も疑問だ
日経新聞(2018年4月24日社説)中立
国家的な課題と不祥事への対応を、ある程度は切り分けて論議していく必要が、与野党にはある
読売新聞(2018年4月26日社説)野党が悪い
国会運営の責任を与党に押しつけるような態度は、抵抗野党との批判を免れまい(略)一刻も早く審議に復帰すべきだ
産経新聞(2018年5月1日社説)野党が悪い
野党6党による国会の審議拒否が続いている。「言論の府」の一員であるという自覚に欠けている。審議の席に早く戻るべきだ
社説読み比べ
朝日新聞は、柳瀬元首相秘書官の証人喚問は「当然」、麻生財務大臣についても「政治責任、監督責任は極めて重大」と批判しています。「野党の要求を真摯(しんし)に受け止め、国会を正常化させる責務は、与党にこそある」として、野党の主張と歩調を合わせています。
毎日新聞も「一義的な責任は与党にある」としていますが、その一方で、
麻生氏が辞任しないのを審議拒否の理由にする野党の対応も疑問だ(略)国会で政権の責任を追及すべきだ(略)重要法案の審議を遅らせる日程闘争が目的であれば、国民の理解は得られないであろう
と野党の姿勢も批判しいます。
これに対して、読売・産経は、
「無論、混乱の発端となったのは政府の体たらくである(読売)」
「政府・与党は野党の審議拒否への批判に余念がないが、自らの失態が国政の混乱を招いていることへの反省が足りない(産経)」
と政府・与党の問題点を指摘しつつも、
政権のイメージダウンを狙い、駆け引きに終始する姿勢は、国民の理解を得られない。野党各党は、内閣支持率が落ちる中でも、自らの支持率が低迷している現状を直視せねばならない(読売)
審議拒否で政権と戦う姿勢を示しても、野党への国民の共感は得られていない。その現実を正視したらどうか(産経)
などと、野党の対応を厳しく批判しています。
こうした中、日経新聞はより「中立」色が強いスタンスです。
一連の不祥事は行政への信頼を揺るがしており、真相解明や責任追及は当然だ。だからといってそれが法案の審議などをすべて欠席し国会を長く空転させる理由にはなり得ない
と野党の対応を問題視する一方で、
一連の疑惑の解明と再発防止に向け、政府・与党が重い責任を負っているのは言うまでもない
と政府・与党を批判し、5紙の中では最もバランスをとった形です。
オピニオンリーダーの反応
与党への批判
平野博文国会対策委員長は25日、定例記者会見を国会内で開き、国会が不正常な状況が続いていることについて「国会審議に応じられる環境になっていない。その環境をつくるのが与党の責任」と述べ、政府・与党の国民無視、国会無視の姿勢を厳しく批判しました。 https://t.co/HbyHBp6Sbb #民進党 pic.twitter.com/P2rn2o9QDF
— 民進党 (@MinshintoNews) 2018年4月25日
その公文書が「堂々と?」改ざん隠蔽されたのでは、国会審議は成り立ちません。事実関係を明らかにして、必要があれば是正させることが著しく困難になり、行政は「やりたい放題」です。省庁を超えて改ざん隠蔽が相次ぐ状況は、国会で「まっとうな」質疑を行う前提を欠いていると言わざるをえません。
— 枝野幸男 (@edanoyukio0531) 2018年4月5日
野党への批判
野党の劣化は底なしだ。なんで事務次官のセクハラが国会審議の対象になるのか。ここに出ている議員は、バカをさらしていることがわかってるのか。 https://t.co/uolEsguI5H
— 池田信夫 (@ikedanob) 2018年4月20日
もっと考える
この問題に関連して、自民党の小林史明議員は、国会のシステムに問題があるため野党が日程闘争に持ち込むしかない現状を指摘し、国会の改革案を提案しています。
→小林史明議員ブログ「日程闘争からの解放:与野党が真に政策を競うための国会改革へ」
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