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東海第二原発、再稼働に6自治体の事前了解を必要とする協定を締結
2018年3月29日、日本原子力発電は、東海第二原子力発電所(茨城県東海村)について、30キロ圏内にある6つの自治体(東海村、水戸市、日立市、ひたちなか市、那珂市、常陸太田市)と新たな協定を結びました。この協定では、東海第二原発を再稼働させる際に、6つの自治体の「実質的な事前了解を得る仕組みとする」と定めています。
これまで電力各社は、原発を再稼働させる際に原発が立地する自治体と県の事前了解を得てきました。この事前了解の対象を立地自治体以外に広げたのは全国で初めてです。
これまでの経緯
原発30キロ圏内、避難計画は義務だが「事前了解」は対象外
2011年3月の東京電力・福島第一原発の事故では、放射性物質が飛散し広範囲に影響を与えました。これを受けて新たに作成された国の防災指針では、原発から30キロ圏内の自治体に原発事故に対する避難計画の策定が義務づけられました。
一方、電力各社は原発の再稼働にあたり、「安全協定」を結んでいる立地自治体と県の事前了解しか得てきませんでした。なお、この「安全協定」は法的根拠があるわけではなく「紳士協定」という位置付けになります。
東海第二原発、30キロ圏内に96万人の住民
各地の原発の周辺自治体は、事故が起これば影響を受けるおそれがあるとして、再稼働の際に立地自治体だけではなく、周辺自治体にも事前了解を得るよう求めてきました。
特に東海第二原発の30キロ圏内には、全国の原発で最も多い96万人が住んでいて、事故の際の住民避難が課題とされてきました。
2012年、東海第二原発から30キロ圏内にある東海村、水戸市、日立市、ひたちなか市、那珂市、常陸太田市の6自治体は懇談会を設立。日本原電が東海村と茨城県との間で結んでいる安全協定を見直し、事前了解の権限を、周辺の5つの市にも拡大するよう求めてきました。
賛否両論
対象自治体の拡大に賛成派
- 原発事故リスクがある周辺自治体が再稼働に関与するのは当然
- 地元の理解を得たいなら積極的に対象を拡大すべき
対象自治体の拡大に反対派
- 再稼働の是非は、原子力規制委員会の安全審査に委ねるべき
- 法的本拠がない「事前了解」の拘束力を強めるのは疑問
新聞各社の主張(抜粋)
朝日新聞(2018年4月3日社説)賛成
周辺自治体が、再稼働手続きに関与したいと考えるのは、当然のことだ(略)国が主導して、同意ルールの法制化を検討するべきだ
毎日新聞(2018年4月4日社説)賛成
政府は、原発30キロ圏内の自治体の意向を反映できる形で、同意手続きの法制化を進めるべきだ
日経新聞(2018年4月1日社説)中立
これを機に、協定の位置づけや地元の範囲を明確にしていくべきだ(略)地元同意のルールをどう見直すか、国が前に出て議論を始めるべきだ
読売新聞(2018年4月4日社説)やや反対
疑問を拭えない(略)再稼働を許容すべきかどうかの判断は、独立性と専門性を有する原子力規制委の安全審査に委ねるのが合理的だ
産経新聞(2018年4月8日社説)やや反対
他の原発立地地域での安易な導入には慎重であるべきだ
社説読み比べ
脱原発を主張する朝日・毎日は今回の協定を評価。全国に広げるべきだと主張しています。
これに対し、原発を今後も活用すべきというスタンスの読売・産経は否定的に受け止め、日経も「今回の新協定が唯一の正解というわけではないだろう」としています。
このように賛否が分かれる中で、読売を除く4紙は、この問題について政府が主導して解決すべきだという点では一致しています。
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