先週の政治振り返り
アメリカがシリアのアサド政権の軍事施設に対するミサイル攻撃に踏み切りました。アメリカは、シリア政権が化学兵器を使用したことへの対抗措置だとしていますが、アサド政権は化学兵器使用を否定しています。安倍首相は「トランプ大統領の決意を支持する」と伝えたほか、イギリス、フランス、ドイツなどもアメリカの行動を支持しています。一方で、アサド政権を支援するロシアは、化学兵器使用の証拠もなく攻撃したとアメリカを批判しており、米ロ関係の悪化は避けられない状況となっています。
安倍首相とトランプ大統領はこの一週間に2度も電話で会談をし、北朝鮮やシリアの問題などで意見交換を行いました。両首脳の連携ぶりが際立っています。
4月3日(月)
企業の人手不足感、25年ぶりの高い水準
日銀が3日発表した短観(企業短期経済観測調査)によると、人手不足感を示す指数が25年ぶりの高い水準となった。特に外食、宅配、土木建設などで人手不足感が強まっている。
4月4日(火)
長嶺大使が約3か月ぶりに韓国へ戻る
韓国駐在の長嶺大使は、去年12月韓国プサンの日本総領事館の前に慰安婦問題を象徴する少女像が設置されたことへの対抗措置として、森本プサン総領事とともに今年1月から一時帰国していた。
日本政府は、?韓国大統領選挙の情報収集、?次期政権への備え、?北朝鮮問題への対処について韓国政府との連携、の3つの目的のため、約3か月ぶりに長嶺大使らを韓国に戻した。
長嶺大使は、大統領の職務を代行しているファン・ギョアン首相に対し、慰安婦問題をめぐる「日韓合意」の順守を次の政権に引き継ぐよう求める方針。
韓国外務省は大使の帰任を歓迎する意向を示しているが、韓国では「日韓合意」や少女像の撤去に反対の世論が強く、先行きは不透明。
4月5日(水)
北朝鮮、弾道ミサイル1発を日本海へ発射
韓国軍の発表などによると、北朝鮮は日本時間午前6時42分ごろ、北朝鮮東岸のシンポ付近から弾道ミサイル1発を日本海に向けて発射した。高度189キロに達し、60キロ離れた海上に落下した。
菅官房長官は記者会見で、
「国連の安保理決議等に違反するものであり、直ちに北京の大使館ルートを通じて北朝鮮に対して厳重に抗議するとともに、強く非難した」と述べるとともに、アメリカ、韓国、中国とも連携していく考えを示した。
4月6日(木)
日米首脳、電話会談。中国の北朝鮮制裁が不十分との認識で一致
北朝鮮による弾道ミサイル発射を受けて、安倍総理大臣とトランプ大統領が電話会談を行った。
安倍首相は、
「アメリカが『すべてのオプションはテーブルの上にある』との姿勢を対外的に示していることを高く評価したい」
「アメリカの強い関与を背景に北朝鮮を抑止し、さらなる挑発行動の自制、安保理決議などの順守を強く求めていきたい」などと述べた。
これに対しトランプ大統領は、
「同盟国日本を100%支える」と述べ、日米韓3か国で緊密に連携していくこと、日米同盟の強化に引き続き取り組む考えなどと示した。
また両首脳は、北朝鮮に対する中国の経済制裁(北朝鮮からの石炭の輸入停止)が十分ではないという認識で一致した。
トランプ大統領は7日からの中国・習近平氏との首脳会談で、対北朝鮮政策において中国側に積極的な役割を果たすように求める考えを示した。
「テロ等準備罪」新設法案、衆院で審議入り
「共謀罪」の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する法案が衆議院本会議で審議入りした。
安倍首相は、主要国の中で日本だけが締結していない国際組織犯罪防止条約を締結するために必要な法整備であり、2020年の東京五輪にむけてテロ対策が責務であるなどとして法案の意義を強調し、早期成立が必要不可欠だと述べた。
民進党の蓮舫代表は記者会見で、「内心の自由が害され1億総監視社会になる可能性がある」「国民の懸念が無くなるまでしっかり審議するよう求めていく」などと述べた。
共産党の志位委員長は記者会見で、「内心の自由を保障した憲法を蹂躙する違憲立法であり、絶対に認めるわけにはいかない」「徹底審議をし、野党共闘と国民運動で必ず廃案に追い込みたい」などと述べた。
日本維新の会の松井代表は、取り調べの録音や録画の義務化などを盛り込んだ対案を提出し、与党側に法案の修正協議を求める考えを示した。
4月7日(金)
アメリカ、シリアのアサド政権の軍事施設をミサイル攻撃
アメリカは、内戦が続くシリア国内でアサド政権による化学兵器の使用があったとして、アサド政権の軍事施設を巡航ミサイル「トマホーク」59発で攻撃した。アメリカによるアサド政権攻撃は初めて。
トランプ大統領は、「この攻撃は化学兵器の使用と拡散をやめさせるためアメリカの安全保障上非常に重要な国益だ」などと述べた。
アサド政権は化学兵器の使用を否定しており、シリア国営通信は、化学兵器を使ったという疑惑自体がねつ造だとして、アメリカの行動は「露骨な侵略行為だ」と反発。
アサド政権を支援するロシアも、アメリカがアサド政権が化学兵器を持っているという証拠がないまま攻撃したことは「主権国家への侵略行為で国際法違反だ」と非難し、米ロ関係の悪化は避けられないとしている。
一方、シリアの反政府勢力、イギリス、ドイツ、フランス、オーストラリア、トルコ、サウジアラビア、イスラエルなどはアメリカによる攻撃に対して支持や理解を表明している。
安倍首相は、「化学兵器の拡散と使用は絶対に許さないという米国政府の決意を日本政府は支持する。今回の米国の行動は、これ以上の事態の深刻化を防ぐための措置と理解している」などと述べた。
4月8日(土)
米中首脳会談、朝鮮半島の非核化へ努力を確認
アメリカのトランプ大統領と中国の習近平国家主席による初めての首脳会談がアメリカ・フロリダ州のトランプ大統領の別荘で行われた。両首脳は一緒に散策するなど、友好ムードをアピールした。
核兵器やミサイルの開発を進める北朝鮮への対応については、朝鮮半島の非核化に向けて努力することを確認した。
一方でトランプ大統領は「中国が行動しないのであればアメリカは単独で対応する用意がある」と述べ、中国に対して北朝鮮への制裁の強化を求めた。
首脳会談の最中にアメリカはシリアのアサド政権の軍事施設に対するミサイル攻撃を行い、軍事行動を排除しないトランプ政権の強い姿勢を示した。
4月9日(日)
日米首脳、電話会談。シリア攻撃めぐり安倍首相「アメリカの決意支持」伝える
安倍首相はアメリカによるシリアのアサド政権へのミサイル攻撃について、「化学兵器の拡散と使用を抑止するために責任を果たそうとするアメリカの決意を支持する」と伝えた。
トランプ大統領は、「女性や子どもを含む無実のシリア市民が多くの損害を被ったことを受けて、化学兵器が二度と使用されないようにするために行ったものだ」と説明した。
今週の見通し
共謀罪の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新たに設ける法案の国会論戦が本格化します。政府・与党は2020年の東京五輪も見据えてテロ対策の強化のため必要不可欠であるとして早期成立を目指しています。これに対し民進党や共産党など野党側は、内心の自由を侵す恐れがあるなどとして廃案に追い込む考えです。与野党が激しくぶつかり合う審議になるとみられます。
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