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日銀が「マイナス金利」を導入したって?

日銀は、2015年1月29日の金融政策決定会合で「マイナス金利」導入を決定しました。具体的には、日銀が金融機関から預かっているお金の一部を対象に、金利をマイナス0.1%に引き下げます。金融機関としては、日銀から利息をもらうのではなく、いわば手数料を支払って資金を日銀に預ける形になります。日銀としては、金融機関の資金をより積極的に貸し出しなどに振り向けるよう促し、目標としている物価上昇2%を早期に実現させるのが狙いです。市場はいったんは「円安・株高」となりましたが、その後「円高・株安」方向へと進みました。この背景は世界経済情勢の悪化との見方が強く、マイナス金利政策の評価にはまだ時間がかかりそうです。

「マイナス金利」ってなに?

「マイナス金利」が適用される対象は、金融機関が日銀に預けるお金(当座預金)のうち一定の水準を超える部分です。これまで日銀は当座預金に「0.1%」の金利を付け、金融機関は大量の資金を日銀に預けてきましたが、この一部を対象に「-0.1%」というマイナスの金利をつけることを決めたのです。金利がマイナスとはつまり、金融機関は日銀に資金を預けることで「手数料」を支払う形になります。日銀は、金融機関が「手数料」を払ってまで資金を日銀に寝かせておくのではなく、資金を企業や個人へ積極的に貸し出すように促すのが狙いです。金融機関の収益を圧迫してしまう恐れがあるため、マイナス金利が適用されるのは「一定の水準を超える部分」と対象を限定しています。

「マイナス金利」政策は、ヨーロッパ中央銀行、デンマーク、スイス、スウェーデンといったヨーロッパ各国の中央銀行が導入しています。日銀はこうした海外での事例も参考に導入したと説明しています。実際に導入されるのは2月16日からで、日銀の9人の政策委員のうち賛成5・反対4の僅差で決まりました。

マイナス金利導入がもたらすメリットとしては、住宅ローン金利が低下することで住宅購入の追い風になると予想されています。一方でデメリットとしては、「手数料」を負担することになる金融機関の収益が圧迫される懸念や、銀行の預金金利が低下することで、銀行へ預けるお金に利息がほとんどつかなくなることなどが指摘されています。

マーケットの反応は?

日銀のマイナス金利の導入発表を受けて、当日の東京株式市場は乱高下した末に大幅に上昇。その後しばらくは日本経済にとって望ましい「円安・株高」の流れとなりましたが、状況がその後に一転し「円高・株安」へと進んでいきます。背景には、原油価格の急落、アメリカの経済指標の悪化など外的な要因があります。マイナス金利導入発表で一時的にもたらされた「円安・株高」効果はかき消された形です。

日銀の黒田総裁は

最近の株安や円高の動きにマイナス金利が影響しているということではない。今後マイナス金利政策の効果は、実体経済や物価の面にも着実に広がっていく(2016年2月12日 衆議院・財務金融委員会)

と述べました。また、円高・株安について

日本経済の基礎的な条件からみるとやや行き過ぎで、過度のリスク回避の動きだと見ている(同上)

わが国の経済や物価に対する影響は注視していきたい。そのうえで、2%の物価目標の達成に影響が及ぶなら、必要があればちゅうちょなく対応を行う(同上)

と述べ、必要があれば追加的な金融緩和も辞さないという姿勢を示しています。

参考リンク

日銀・金融政策決定会合「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入(2015年1月29日)