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自民・公明の与党協議はどんな風にまとまったの?

自民党が「限定容認論」で集団的自衛権の行使容認を目指したのに対し、公明党は「個別的自衛権や警察権で対応可能」と慎重な立場でした。そんな中、「1972年の政府解釈」が論理的根拠として浮上。文言の修正を経て、与党協議はまとまりました。

2014年5月15日に安保法制懇が集団的自衛権の行使容認を求める報告書を出すと、議論の舞台は自民党と公明党による与党協議に移りました。

しかし、自民党が砂川事件判決を根拠とした「限定容認論」で党内議論をまとめたのに対し、公明党は「砂川事件判決は集団的自衛権を念頭に出されたものではない」などと否定的でした。

協議にあたり政府が示した具体的な15事例のうち8事例が集団的自衛権に関するもので、自民党側は「集団的自衛権の行使が必要だ」と主張しましたが、公明党側は「個別的自衛権や警察権で対応可能」とし、両者には隔たりがありました。

ただ、公明党が連立離脱という強硬姿勢をとらなかったため、自民党のペースで協議は進みます。そして議論の論理的ベースとして「砂川事件判決」ではなく「1972年の政府解釈」が浮上しました。

「1972年の政府解釈」

1972年10月の政府資料には以下のようにあります。

憲法は、第9条において、同条にいわゆる戦争を放棄し、いわゆる戦力の保持を禁止しているが、前文において「全世界の国民が・・・平和のうちに生存する権利を有する」ことを確認し、また、第13条において「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、・・・国政の上で、最大の尊重を必要とする」旨を定めていることからも、わが国がみずからの存立を全うし国民が平和のうちに生存することまでも放棄していないことは明らかであって、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない。
しかしながら、だからといって、平和主義をその基本原則とする憲法が、右にいう自衛のための措置を無制限に認めているとは解されないのであって、 それは、あくまで外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るための止むを得ない措置としてはじめて容認されるものであるから、その措置は、右の事態を排除するためとられるべき必要最小限度の範囲にとどまるべきものである。
そうだとすれば、わが憲法の下で武力行使を行うことが許されるのは、わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られるのであって、したがって、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は、憲法上許されないといわざるを得ない。
(※参考:首相官邸HP「安全保障の法的基盤に関する従来の見解について」

ポイントを整理すると、次のようになります。

憲法前文と13条から、

「自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置」は認められる。

しかし、

「必要最小限度の範囲にとどまるべきもの」であり、「集団的自衛権の行使は、憲法上許されない」

与党協議では、この基本的な考え方をふまえながら、「必要最小限度」の中に集団的自衛権の行使も含まれるという新たな解釈を打ち出すのです。

従来の自衛権の行使3要件

従来の政府解釈では、以下の3要件を満たした場合に個別的自衛権を行使できる、とされてきました。

  • 我が国に対する急迫不正の侵害があること
  • これを排除するために他の適当な手段がないこと
  • 必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと
  •  ※1985年の政府答弁書より

    与党協議を経て固まった「集団的自衛権」の新3要件

    歯止めをかけたい公明党側の要望をふまえて文言が調整され、「集団的自衛権」を行使する条件は、以下の3要件となりました。

  • 我が国、または我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること
  • これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと
  • 必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと
  • 要件1では、「密接な関係にある他国」は「他国」だったものが、「明白な危険」は「おそれ」だったものが変更された部分です。
    また、要件2では「我が国の存立を全うし、国民を守る」のところは、修正前の「国民の権利を守る」から変更されました。

    こうして、新解釈の下での、新たな3要件が固まりました。