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【読み比べ】金融庁の「老後2000万必要」報告書めぐる問題(産経は野党を強く批判)

老後の資産形成をめぐる金融庁の審議会報告書が波紋を広げていますね。
この報告書だニャ。

  • 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」
  • 報告書の中で、

    夫 65 歳以上、妻 60 歳以上の夫婦のみの無職の世帯では 毎月の不足額の平均は約5万円

    30 年で約 2,000 万円の取崩しが必要になる

    と指摘している部分が注目されたんだニャ。

    野党が追及したのに対し、政府は安倍総理は「誤解を与えるものだった」と釈明するなど火消しに必死で、麻生財務大臣が「政府のスタンスと違う」として報告書の受け取りを拒否する異例の事態に発展しているニャ。
    主要5紙の中で、この件をいちはやく社説で取り上げたのは産経新聞やで。
    6月12日の社説『老後「2千万円」 厳しい現実に目背けるな』の中で、

    野党は、ことさらに公的年金と豊かな老後を送るための余裕資金を混同させ、不安をあおってはいないか。これが参院選を控えた戦術であるとすれば、あまりに不毛だ

    野党は報告書について「『100年安心』は嘘だったのか」と揚げ足取りに終始している。だが公的年金は元来、老後資金の全てを賄う設計とはなっていない。この大原則は民主党政権時も同様で、知らないはずはない

    などと、野党側を強く批判しとるで。
    その上で、

    野党は、公的年金に対する無用な不信を広げるような言動は慎むべきである。政府・与党も報告書の撤回でお茶を濁し、少子高齢化で迎える厳しい現実から目を背けてはならない。年金の長期的な給付水準を示す財政検証を早期に示し、与野党で幅広い真摯(しんし)な議論を進めるべきである

    と政府与党と野党の両方にクギを刺しとるわ。

    いやいやいや、なんでそうなるんですか!
    朝日新聞は6月13日の社説『報告書「拒否」 議論避ける小心と傲慢』の中で、

    1週間前に自慢げに紹介した有識者の報告書を、選挙の逆風になるとみるや一転してこき下ろし、受け取りを拒む。相次ぐ批判も報告書ごと「なかったこと」にして、議論から逃げる。あけすけな小心さと幼稚な傲慢(ごうまん)さが同居する政府与党の姿には、あきれるしかない

    と、厳しい表現で政府・与党を批判しています。
    そもそも、この有識者会議は麻生大臣の諮問を受けて設けられたものです。

    議論を頼んでおきながら、風向きが悪くなると背を向けるのでは、行政の責任者の資格はない。審議会は政府を代弁すべきだという「本音」が露呈している

    と思います!それに、

    麻生氏は「これまでの政府の政策スタンスとも異なっている」という。異論があるなら、受け取ったうえで反論すればいい。不正確なところがあるのなら、より正確なデータや解釈を示すべき

    ですよ!
    なのに産経新聞は真っ先に野党を批判するとは、驚きです!

    たしかに、報告書を受け取らないっていう政府の対応はヒドイと思うヨ。
    日経新聞は6月13日の社説『「資産形成のすすめ」から政府は逃げるな 』で、

    専門家が重ねた議論をほごにし政策に生かさないのはおかしい。政府は参院選を前に逃げたといわれても反論できまい

    と政府を批判しているヨ。
    その上で、

    与党議員らがうたい文句にしてきた「100年安心」を信じる有権者は、今や少数だろう。参院選へ向け、与野党が改めて年金改革の案を示すときだ

    と指摘して、与野党双方に対して改革案を求めているネ。

    その通りだわ。
    毎日新聞も6月13日の社説『「2000万円」報告書を拒否 将来不安から逃げる政府』の中で、

    金融庁の報告書は、表現に問題があっても、蓄えを使い切るリスクについて警鐘を鳴らすという狙いは間違っていない。政府はその存在をなかったことにするのではなく、正面から受け止めるべきだ

    政府を批判しているわ。それと同時に、

    野党はいたずらに不安をあおるのではなく、建設的な議論を重ねる必要がある

    と野党にも注文をつけているわよ。

    政府与党も野党も、どっちもどっちじゃのう。
    読売新聞は6月15日の社説『老後資金問題 長寿への備えを冷静に論じよ』の中で、

    麻生金融相は、報告書を受け取らない方針を示した。参院選で年金問題に焦点が当たる事態を避けるのが狙いだろう。
    自ら諮問しながら、受け取りを拒むのはいかがなものか。有識者が積み上げた議論の結果を政策に生かさないのは残念である

    と政府の対応を批判しておる。その一方で、

    野党は今回の試算について「年金の100年安心は、うそだったのか」と批判し、自助努力を求める政府を追及している。
    だが、制度の長期的な安定と、個人の生活保障を混同した議論は疑問だ。そもそも、年金ですべての支出を賄うことは想定していない。制度が揺らいでいるかのような主張は慎まねばならない

    と指摘し、野党の態度にも苦言を呈しておる。

    公的年金への不安を殊更にあおるのは、非生産的と言わざるを得ない。政府と与野党は、超高齢化社会への備えについて冷静に論じるべきだ

    ということじゃ。

    今回の金融庁の報告書をめぐっては、こんな記事も見つけたニャ。

  • 嫌われた報告書~“老後に2000万円”読んでみた(NHK)
  • 報告書を読んだ記者は、報告書の指摘そのものは珍しいものではないとした上で、

    報告書は将来に備え早くから運用に関心を持って欲しいと訴えるものでした。しかし日々の生活さえ大変だと声をあげている世帯も少なくない中、2000万円の蓄えや、まして運用など考えられないというような意見も多くあがり、将来の不安への根深さも感じました

    などとまとめているニャ。

    これだけ話題になった報告書、一度しっかり読んでみるといいですね。
    年金をめぐっては、5年に1度行われる財政検証の公表が遅れています。これも、選挙への影響を避けるために先送りされているのではないか、と指摘されています。
    政争の具にしないで議論して欲しいものですね・・。

    【朝刊比較】5紙の1面記事&社説一覧

    朝日新聞

    毎日新聞

    日経新聞

    読売新聞

    産経新聞

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