四国電力の伊方原子力発電所3号機(愛媛県)について、広島県などの住民4人が「重大事故の危険がある」として運転の停止を求める仮処分を申し立て、広島地方裁判所はことし3月、これを退ける決定をした。住民側は、決定を不服として抗告し、広島高等裁判所では、四国電力が想定する地震の最大の揺れや周辺の火山の噴火の危険性をどのように評価するかなどが争われた。
広島高等裁判所は「熊本県の阿蘇山で巨大噴火が起きて原発に影響が出る可能性が小さいとは言えず、新しい規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は不合理だ」などと指摘し、運転の停止を命じた。高等裁判所が原発の運転停止を命じるのは今回が初めて。
運転停止の期間は、広島地方裁判所で進んでいる裁判で異なる結論が出る可能性があるとして、来年9月30日までとした。伊方原発3号機は去年8月に再稼働し、ことし10月から定期検査のため運転を停止している。定期検査が終了する来年2月以降も運転できない状態が続く可能性が高い。
住民の弁護団の河合弁護士は「高等裁判所で差し止めの決定が下ったのは初めてで、被爆地の広島でこのような決定が出たのは意義が大きく、歴史的な転換点だと思う」などと話した。
一方の四国電力は「「当社の主張が認められなかったことは極めて残念であり、到底承服できない。内容を確認のうえ、速やかに異議申し立ての手続きを行います」とコメントしている。なお、四国電力によると、伊方原発3号機を運転できないと、代わりとなる火力発電所の運転に必要な燃料費などで1か月あたり約35億円の損失が出る。
また、原子力規制委員会の更田委員長は、今回の決定が今後の原発の審査における火山の想定に与える影響について「私たちは状況にかかわらず、科学的・技術的な知見・理解を基に判断していくだけで、審査への影響はない」と述べた。